献上小説置き場3
□新たなスタート
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入江正一とスパナがミルフィオーレを裏切ってボンゴレへ行ったという情報はすぐに広まり、入院していたグロ・キシニアの所にも届いた。
運ばれた時のグロは動く事も話しをする事も出来ない状態だったが、今ではだいぶ回復して包帯もほとんど取れていた。
そんな時に舞い込んできたこの信じがたい話。
結局自分は捨てられたのだ。
……スパナに……。
「スゴイじゃないか、グロ!あの六道骸を倒すなんて!」
半年と少し前、あの六道骸を倒した時、スパナは確かにそう言って喜んでいた。
普段、機械以外には滅多に見せない笑顔も見せた。
あれも全て嘘だったというのか。
今までの彼の、全てが……。
ミルフィオーレも変わった。
真六弔花などという奴らが出てきて、白蘭はその他はいらないようだ。
「ハハッ……何だ…何だ…何だこのザマは!!」
グロは血管をピクピクさせながら怒りに震える。
自分は自由にやってきたつもりだった。
だが、みんなの方が好き勝手にやっているではないか。
スパナがボンゴレ?
ふざけている。
では今までの事は全て何だったというのか。
「グロ、ウチはアンタのその血管が破れるトコをいつか見てみたい」
「何!?馬鹿にしているのか!?」
「いや、そうじゃない。興味を持っているんだ」
そんな他愛無い会話をしたのは、そう昔ではない。
彼はずっと自分の傍で機械をいじっている、そう思っていた。
ミルフィオーレがバラバラになり、グロは行くあてがなくなった。
そしてどうしようかと悩んだ時、なんとボンゴレへと向かった。
どうしても納得出来ない事がある。
ハッキリさせないのは性に合わない。
ボンゴレの地下アジトへと潜入を試みる。
だがそう簡単ではない。
「日本…か」
そういえば以前に一度だけ、スパナと行った事がある。
グロは任務で、スパナは趣味で。
彼は日本好きなのだ。
自然と足は黒曜センターへと向かっていた。
1番嫌な場所のはずなのに、何故だろう。
「全て、ここで終わったのだ……全て…」
「じゃあ、ここから始めればいい」
「ッ!!??」
慌てて振り返ると、いつの間にか今1番会いたくない男がいた。
「スパナ……!」
「グロ、久しぶりだな」
スパナはいつものツナギ姿でいつものように軽く手を挙げる。
「スパナ……よくもこの私の前に現れたな…!この…裏切り者が!!」
吐き捨てるように言うと、スパナは少しうつむいた。
「……裏切ったのは否定しない。確かにウチはミルフィオーレを抜けた。でも、メカニックまでは裏切ってない」
「はぁ!?」
「ウチは機械をいじりたい。その場がたまたま、あそこだっただけだ。グロだってそうだろ?」
「私は………」
確かに、ミルフィオーレという組織自体に固執がある訳ではなかった。
スパナは微笑むと、手を差し出す。
「グロ、ボンゴレに入らないか?ボンゴレ10代目はいい奴だ。きっと仲間に入れてくれる」
「こっ…断る!」
同情までされてたまるか。
グロは差し出された手を勢い良く叩いた。
スパナは少し悲しそうな顔をする。
「グロ……」
「黙れ、裏切り者!おまえは裏切った!ミルフィオーレだけでなく、この私も!!」
「…………」
「今までのおまえは全て嘘だったんだろう!私が知っているスパナは何処だ?何処にもいやしない!」
そこまで言われるとは思っていなかったスパナ。
だがこれだけは言っておきたい。
「ウチはウチだ。ミルフィオーレにいた時のウチも本当のウチだ。嘘なんてない」
「だが現におまえは…」
「仕方なかった。ボンゴレ10代目の技の完成が見たかったから」
「技の完成……?」
そこでなんとなく話が見えてきたグロ。
やっと、彼は正一とは違うのだと理解する。
しばらく考え込んでいたが、ふとグロは苦笑した。
「………全く、昔っからそういう奴だよ、おまえは…」
「それがウチだ。アンタも、ミルフィオーレを抜けてもアンタだ。そうだろ?」
「まぁ…な……」
何だか細かい事で悩んでいた自分が馬鹿みたいではないか。
「あ、そうだ、これ日本の名産」
「何だ?」
「米」
「っ……そのまま食えるかぁ!!」
しかも少量だし。
ゴホンと咳払いをし、グロはスパナに向き直った。
「私はボンゴレに入るつもりはない!だが、この決着に興味がある。だからしばらくは日本にいさせてもらおう」
「それならまた一緒に観光しよう!」
「まぁ……いいだろう…」
帰り道、結局何をしに日本へ来たのかわからなくなるグロなのであった。
→後書き