献上小説置き場3

□完全無欠最強無敵
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事件は、思わぬところで起こった。
 
 
『山本武は預かった。返してほしければ今すぐ寿司屋を辞めろ。』
 
ある日、山本剛宛に、それが届いた。
 
 
「………………」
 
まさかと思うが、今日は部活がないはずなのに帰りが遅い。
 
寿司屋を辞めろという事は、十中八九同業者の仕業。
目星もついている。
おそらくは、この前近くにオープンした寿司屋だろう。
そこは店の外装は豪華だが、味は全く良くない。
大して修行もしていない者が作った味だ。
最初は話題もあって客はいたのだが、やはり美味しくなくては客足も伸びない。
すぐに皆はその店より竹寿司へと行くようになった。
 
実はその店は、開店当初から良くない噂もあった。
裏でヤクザが絡んでいるだとか、土地を無理矢理買い取って建てたとか。
もしそうだとしたら、いくらあの強い息子でも敵うまい。
 
 
 
剛は悩んでいた。
このまま要求を呑む訳にはいかない。
だが、もし本当に息子が人質にとられているとしたら…。
店に乗り込む訳にもいかないだろう。
 
「っクソ!!」
 
ダンッ!とカウンターの台を叩く。
自分の剣はまだ衰えていない、これは確信を持って言える。
そこらへんのチンピラに負けるとも思わない。
それでも、大事な大事な一人息子を人質にとられていては、どうしようもない。
 
 
時計を見る。
午後8時。
部活をやっていたとしても、もうとっくに帰っている時間。
先程携帯に電話してみたが、通じない。
一応友達何人かに電話してみたが、途中まで一緒に帰っていたとの事だ。
 
 
………一か八か、行くか……
 
剛は刀を手に取り、ドアを開けた。
 
 
 
 
「う"お"っ!?」
 
 
「………スク坊…」
 
ドアを開けた瞬間、スクアーロが目の前にいた。
 
 
「剛ぃ?…………どぉしたぁ…?」
 
明らかに彼のまとうオーラがいつもと違う事に気づいたスクアーロは、何かを感じ取った。
視線を移せば、刀が。
 
「何か……まさか武に…!?」
 
焦るスクアーロを見て、意外にも剛はそれで落ち着いた。
そうだ、焦ってはいけない。
 
「……スク坊、とりあえず中で話す」
 
「………あ"ぁ…」
 
 
 
 
そして全ての事情を聞き終えたスクアーロ。
顔つきは仕事の時と同じものになっていた。
 
「……とりあえず剛、おまえは動くなぁ」
 
「何?」
 
「下手に動くと逆に、焦った敵さんが武に何かする恐れがある。ここは俺に任せとけぇ」
 
「………任せて、いいんだな?」
 
「あ"ぁ」
 
「………………」
 
「………………」
 
 
しばらくして、剛は口の端を上げる。
そしてスクアーロの肩に手を置いた。
 
「俺の息子を任せた!おまえなら信じられる」
 
「あ"ぁ!任せろぉ!」
 
男同士の約束が、交わされた。
 
 
 
 
 
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