献上小説置き場3

□真実の姫
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「獄寺君、なんか変じゃない…?」
 
ある晴れた日の休み時間。
教室でツナが山本に耳打ちする。
 
「あぁ…」
 
さすがの山本も、あからさまにいつもと違う獄寺の様子に気付いていた。
 
思えば一昨日辺りからおかしかった。
山本が呼んでも無視するのはよくある事だが、ツナが呼びかけても気付いていなかったり、授業も面倒臭そうではなく上の空。
そして何より、煙草の本数が明らかに増えた。
イライラしているのかと思えば、ため息をついたりする。
 
山本は今も遠くを見ている獄寺を見て、それからツナに向き直った。
 
「これはもうアレだな…」
 
 
「「ベル!!」」
 
2人の声が揃った。
 
 
 
 
そうと決まれば、事情を探るしかあるまい。
 
ツナは、単刀直入にザンザスに聞いてみる事にした。
すると返ってきた答えは、「ベルが長期任務」。
どうやら、割と長い期間らしい。
何でも依頼人が彼を指名したので、代わりようがないようだ。
 
 
「なるほど……」
 
納得がいった。
1週間や2週間は仕方ないが、今回のベルの任務は2ヶ月。
そりゃあ様子もおかしくなる。
 
そして何より厄介なのが、なんと今回の任務は暗殺ではなく護衛。
とある貴族のお嬢様を2ヶ月間護衛するのが仕事だった。
これは相手のお嬢様がベルを気に入ったから、らしい。
 
 
「この事、獄寺君は知ってるの?」
 
「さぁな。ただ、マーモンらへんが面白がって情報を流したか売ったかした可能性はある」
 
「………………」
 
どうしようかと、途方に暮れるツナだった。
 
 
 
 
 
一方のベルも、かなり不機嫌だった。
仕事だから駄々をこねるつもりはないが、それにしても暗殺じゃない仕事なんてやり甲斐がない。
しかもあんな我が儘小娘の護衛なんて、まっぴらごめんだった。
しかもその娘に相当気に入られたのか、あからさまにアピールしてくる。
だがあくまで依頼人の娘、仕方ないとぐっと我慢していた。
 
「ねぇベルゥ」
 
「…………何」
 
「相変わらずつれない〜」
 
「……………」
 
口調から動きから、なにもかもが気に入らない女だ。
娘は構わず話し出した。
 
「明日、お城で私の誕生日パーティーがあるの。もちろん来てくれるわよね?護衛だもの」
 
「…………あぁ」
 
断れるはずもないとわかって言っているのもムカつく。
 
だが、ベルには計画があった。
この娘を狙うのは、ここら一帯を占める小さなマフィア。
以前、彼女の父親とそのマフィアの間にいざこざがあり、それで娘に狙いを定めたのだ。
つまり、そのマフィアを叩けば済む話。
 
護衛任務は2ヶ月。
12月初めから1月末までだ。
だが狙われる心配がなくなれば任務は早く終わる。
これは依頼人である彼女の父親も了承済みだった。
つまり、護衛兼暗殺という訳だ。
 
なんとしても年末までに終わらせる……そう思い、昼は護衛、夜は調査を続けていた結果、やっと敵のアジトを見つけた。
この辺りは他にマフィアもいない為、弱いが偉そうに踏ん反り返るだけの奴ら、自分の敵ではない。
1人でも十分だ。
 
 
「しししっ、やっとあのクソ女から解放されるっ」

そしてやっと、ナイフを使える。
何より、やっと帰れる。
 
ベルは上機嫌で夜の闇へと消えていくのだった。
 
 
 
 
 
 
「じゃあ、確かに」
 
マーモンは獄寺のアパートを出る。
その手には茶封筒が。
もちろん、中身は現金。
 
実はザンザスの予想通り、マーモンは獄寺へ情報を売っていた。
しかも格安で。
何故って、ルッスーリアからたんまり金を貰ったからだ。
今回の大元の依頼主はルッスーリア。
ベルの任務の話を聞き、面白そうだと思い、マーモンに情報を流すよう頼んだのだ。
 
 
「おいマーモン」
 
「っ!?」
 
気付けば、アパートの前でリボーンが待ち構えていた。
 
「リ…リボーン……」
 
「ずいぶん楽しそうだが、あんまり獄寺で遊ぶな。ツナが気にして修行に集中出来ねぇからな」
 
「そんなの僕には関係な……」
 
「ほぉ…?」
 
途中でリボーンから黒いオーラが発せられ、マーモンは一歩後ずさる。
 
「な、何さ……」
 
「調教が足りないようだな、バイパー?」
 
「たっ足りてるよっ」
 
幻術を使い、マーモンがパッと消える。
もちろん、すぐにリボーンに見つかってたっぷり調教されたのは言うまでもない。
 
 
 
「…………………」
 
アパートの中では、呆然とする獄寺の姿があるのだった。
 
 
 
 
 
 
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