献上小説置き場3

□真実の姫
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「38度……」
 
ベルをベットに寝かせて熱を測ると、やはり熱があった。
 
「ごめん隼人……隼人の顔見て安心したらつい……」
 
「そんなに大変な任務だったのか…?」
 
「まぁ…ね」
 
体温計をしまいながら、獄寺は疑うような複雑な表情でベルを見た。
 
「……任務はただの護衛だろ?」
 
「うん…………って、何で隼人が知ってんの?」
 
「聞いた」
 
「あー……」
 
きっとマーモンあたりだな、とベルは察する。
 
「お城のお姫様はどうだったよ?」
 
長い前髪を除けて、濡れたタオルをおでこに乗せる。
ベルがこんな時でも憎まれ口しか叩けない自分に腹が立つ。
 
「そこまで聞いてたんだ………」
 
「ホンモノのお姫様だろ?」
 
「まぁね」
 
そこで獄寺は、ベット脇に座ったまま上半身をベルの布団の上に倒す。
そしてボソッと言った。
 
「……俺は、勝てねーじゃねぇか……」
 
「…………は?」
 
何が?と言おうとして、ベルは目を見開いた。
 
もしかして隼人は、あの女に嫉妬している……?
 
 
ベルは布団から腕を出し、自分のお腹辺りに顔を埋めている獄寺の頭を撫でる。
一瞬ピクッと反応したが、おとなしく撫でられている。
 
「ねぇ隼人……俺、帰ってくんの早かったでしょ」
 
「………あぁ」
 
顔を埋めたまま、獄寺は頷く。
 
「それでもって、今熱出てんのって、何でだと思う?」
 
「………知らん」
 
「…………ちょっと柄にもなく頑張っちゃったからだよ。昼は護衛、夜は暗殺の為の調査」
 
「………?」
 
「今回の任務は護衛兼暗殺だからね。なかなかシッポ出さなくて大変だったけど、早く帰りたかったし」
 
「どういう……」
 
そこで獄寺が顔を上げた。
薄っすら目が赤い。
 
「だから、2ヶ月もあんな女の傍になんていたくなかったってコト」
 
わかった?とベルが微笑むと、獄寺は真っ赤になってそっぽを向く。
 
「そっ…それでさっき倒れた…って訳か…?」
 
「あ〜……うん。あれはちょっとカッコ悪かったなぁ」
 
自嘲気味に笑うと、突然上から抱きしめられた。
というか覆い被らされた。
間にあるこの布団が邪魔だ。
 
「隼人……?」
 
「………何も…なかったんだな…?」
 
ベルの肩に顔を埋めて獄寺が呟く。
 
「何もなかったよ」
 
そう言いながらベルは頭を撫でた。
 
「相手が指名したって聞いたけど」
 
「言い寄られたけどね、恋人いるっつってやったよ。王子にピッタリな最高の姫がいるって」
 
「おっまえ……」
 
「ん?」
 
「…………バカ」
 
「……うん、隼人バカ」
 
「……無茶すんなよ」
 
「ごめんね?」
 
「………おかえり」
 
「…うん、ただいま」
 
布団越しにぎゅう〜っと抱き合う。
 
一旦離れたところで、獄寺はベルのおでこに乗っていたタオルを目の位置まで下げた。
 
「ちょっ…何?隼人」
 
その瞬間、唇に、確かに唇が重なった感触がした。
すぐに身体の上の重みが消え、慌ててタオルを取ると、部屋から出て行くキスをした張本人がいた。
ちらっと見えた横顔は、笑ってしまうくらい真っ赤だった。
 
 
「も〜…隼人、可愛すぎ」
 
さらに体温が上がってしまったベルであった。
 
 
 
 
 
 
 
「で?ベル帰って来たの?」
 
「えっ!?」
 
休み時間の教室。
ツナは獄寺に尋ねてみた。
 
「じゅっ10代目、何故それを……」
 
「だって、獄寺君見てたらわかるよ。いつもの調子に戻って、でもちょっと嬉しそうなんだもん」
 
「なっ……」
 
「でしょ?」
 
笑顔のツナに獄寺はわたわたと慌て、それを誤魔化すように早口で言った。
 
「だ…だってアイツ、帰って来た途端倒れるんスよ?迷惑極まりないっスよっ。予定より早く帰ってくるし、でも熱は出すし……」
 
それって早く帰って来る為に仕事無理したんじゃあ…?と、ツナと隣で聞いていた山本は思い、結局惚気話聞かされている気分になるのであった。
 
 
 
 
 
 
 
→後書き
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