献上小説置き場3
□家族
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やっと掃除を再開し、夕方には大体終える事が出来た。
「お疲れさん、2人共!」
剛が笑顔で大掃除の終了を告げる。
「スクアーロ、ありがとな!」
「いや、思わぬ収穫もあったしなぁ」
「収穫?」
もちろん、先程の写真はちゃっかりゲットしていた。
夕飯に寿司を食べ、その少し後に年越蕎麦を食べる。
これは山本家の毎年の事だった。
「じゃあ武にスクアーロ、部屋に戻ってな」
「え?」
山本は不思議がる。
毎年、居間でテレビを見ながら年を越していたからだ。
「俺ぁ1人で飲みてーんだよ」
剛の言葉にスクアーロは感づき、「じゃあそうさせてもらうぜぇ」と言って、山本を連れて2階へと上がって行った。
部屋へついた山本は、首を傾げるばかり。
「親父、何で………」
「俺達に気を遣ったんだろぉ」
「……?」
「恋人同士を2人きりにさせてくれたんだぁ」
「あぁ、そーゆー事か!」
山本は「親父は素直じゃないのな」と苦笑する。
「年越しん時は剛んトコ戻るかぁ」
スクアーロの台詞に、山本は笑顔でお礼を言うのだった。
夜10時。
2人はベットを背に床に座り、のんびりしていた。
「……今年はいろいろあったなぁ」
「だなっ」
「武が剛に俺達の事を言ったのには驚いたぜぇ」
約2ヶ月前、山本は父親である剛に、自分がスクアーロと付き合っている事を本人がいる前で告げたのだ。
そしてさすがというべきか、剛はあっさり受け入れた。
少々感づいていたらしいが。
「やっぱり親父にも知っといてほしくってさ」
自分が今、彼がいるから幸せな事を。
おおげさかもしれない。
けれど知っておいてほしい。
家族じゃない、自分の1番大切な人を。
時計を見れば、11時を回っていた。
2人は1階まで下りる。
みんなで年越しをする為だ。
下では、剛がテレビを見ながら日本酒を飲んでいた。
そして2人の姿を見ると「何だ、どうした?」と少し酔った口調で聞く。
「年越しはみんなでしようぜ、親父!」
「だけど武、スク坊が可哀相じゃあ……」
「だって、スクアーロが言い出したのな」
剛は慌ててスクアーロを見る。
彼は笑って言った。
「んなに気ぃ遣うんじゃねーよ、剛ぃ」
「だってオメー…恋人同士の年越しに親がいるって……」
「年越しに1人かぁ?家族で過ごすもんなんだろぉ?テメェがいなくてどうするんだぁ」
「スク坊………」
剛は申し訳なさそうな嬉しいような笑顔で2人を迎える。
「スク坊、飲め飲め!今日はとことん付き合ってもらうぜ!」
「望むところだぁ」
「ほら武も!今茶ぁ煎れっからよ!」
「あ、自分でやるよ」
3人揃ったところで、コタツに入りミカンを囲む。
大人組は日本酒、山本は日本茶だ。
「で?2人の出会いは何だ?」
「「えっ!?」」
いきなりピンチな質問に、声を揃える山本とスクアーロなのであった。
→後書き