献上小説置き場3
□やっぱり一緒にいたい
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12月30日の夜。
獄寺は部屋で1人、ソファーでくつろいでいた。
「はぁ……」
学校もなく、特にやる事もない。
同居人もここ数日いない。
だから今日の夕飯もレトルトだった。
1人なのに作る気にはなれない。
寂しい訳ではない。
いつも1人だったのだから。
ただ少し、物足りないような気がしているだけで。
「………………」
クリスマスも別々だった。
ベルが仕事だというので、自分もダイナマイトの調達に出かけた。
そして3日前、ベルが申し訳なさそうに「これから数日間、仕事で帰れないんだっ」と言ってきた。
別にいつもの事。
遠征なんてよくあるし。
たとえそれが年末だとしても……。
獄寺は一瞬、自分もどこかへ出かけようかと思ったが、年末年始に一体何処へ行けばいいのかわからない。
ツナが気を遣って、2日は一緒に初詣に行こうと誘ったので、とりあえずそれまで家でのんびりしていればいいかと思う。
だがのんびりというのも性に会わない獄寺は、思いきっておせち料理に挑戦することにした。
もしかしたら誰も食べないかもしれない。
けれど、もしかしたら食べるかもしれない。
………日本料理が大好きな同居人が……。
12月31日、大晦日。
獄寺は朝から台所に立っていた。
もちろん、おせち料理作りの為。
「伊達巻、かまぼこ、数の子、焼き豚………」
これらは買ってくればいい。
さすがに全て作る訳にもいくまい。
「煮物、黒豆、栗きんとん、昆布巻き、酢蓮……」
このくらいは作れるだろう。
伊達巻も作れなくもないのだが、おそらくこれは買った方がマシだ。
「………よし!」
獄寺は材料の揃ったテーブルを見る。
そこには伊勢海老や寿司も。
実は朝に買い出しに出かけた時に、偶然山本の父親である剛に会ったのだ。
「よぉ、獄寺君じゃねーか」
「あ……ども…」
「ん?何だ、買い出しか?」
「あ、はい……ちょっとおせち料理なんぞ作ってみようかと…」
「へぇ!そりゃあスゲーな!……っと、そうだ!獄寺君、ちょっとウチ寄ってってくんねーか?」
「え?」
「同業者からデッケー伊勢海老いくつか貰ったからよ、おすそ分けだ!ついでに寿司もいくつか持ってきなよ!」
という訳で、伊勢海老と寿司をいただいてしまった訳だ。
だがこれは助かる。
ただの海老ですら買うのは高いし、伊勢海老はあるだけでも豪華さが違う。
「っしゃ!作るか!」
獄寺はエプロンをして、ふんぱつして買った重箱を用意した。
……正直、何かをしていないと暗い方へと考えてしまうのだ。
忙しいくらいがちょうど良い。
帰って来るかもわからない者の為に、帰って来いと願いを込めながらひたすら料理する獄寺だった。