その他連載置き場

□まさかの罠
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「………………………」
 
「アレンよ、彼女は友人だそうじゃないか」
 
「友人…………」
 
まさか。
 
「つもる話もあろう。私は公務に戻るからゆっくり語り合いなさい」
 
「ありがとうございます、国王」
 
クモは丁寧にお辞儀をする。
国王は「アレンもすみにおけんなぁ」とか笑いながら行ってしまった。
クモの容姿や髪の長さもあるが、きっと服装で女性と見間違えたのだろう。
 
 
 
クモはゆっくりと近づき、向かいのソファーに腰を下ろした。
 
「アレン、やはり祖国に戻ってきたな」
 
「……何の用だ」
 
「そう構えるな、私はもうおまえに危害は加えない」
 
「え…?」
 
「おまえは私に教えてくれたな、“怖いのは皆同じだ”と」
 
「あぁ」
 
アレンは頷く。
本当はあの時、彼に会って少し安心した。
死を恐怖しているのは自分だけではないと知ったから。
だからそんな事を言えたのだ。
 
「アレン、私はおまえに救われた。私も一度きりのこの命、悔いのないよう生きていこうと思う」
 
「クモ………」
 
 
「おまえと共に」
 
 
「……………は?」
 
 
クモは突然乗り出してアレンの手を掴む。
そして言った。
 
「アレン、私はどうやらおまえに一目惚れしたらしい」
 
「なっ………??!!」
 
状況が把握出来ていないアレンをおき、クモはなおも話し続ける。
 
「最初は利用するだけにしようと思ったが、塔の上でどうやらおまえに惚れたようだ」
 
「………………」
 
「いや、一目惚れではないな」
 
その言葉でアレンは安堵のため息をつく。
そう、きっと何かの勘違いだ。
 
だがクモは容赦なく言った。
 
「段々変わっていくおまえを見て好きになったんだ、一目惚れではない」
 
「………………」
 
かつてのクモは何処へ行ったのか、すっかりおかしくなっていた。
いや、おかしいのは元からだが。
 
 
「と、とりあえず、生きていたんだな、クモ」
 
「あぁ」
 
「でもどうやって……」
 
確かに彼が消える瞬間を見たはずだ。
そんなアレンの考えを察したのか、クモは言った。
 
「あれは幻だ」
 
「幻……」
 
「幻術ともいって、実際と違うものを見せる魔法だ」
 
「へぇ……」
 
「という訳で、アレン」
 
「何だ?」
 
「私はおまえの影のようにおまえから離れないと誓おう」
 
「は?!いや、離れてくれて結構だ」
 
「そう照れるな」
 
「誰がっ!!」
 
全く話が噛み合わない。
どうしたもんかと悩んでいると、救いが来た。
ノックと共に使用人が入って来たのだ。
 
 
「アレン様、そろそろ御夕飯の時間です」
 
「あ、あぁ…。そういう事だ、クモ、おまえも早く帰れ」
 
「今日の料理は何だ?」
 
「新しい家族を迎えた素晴らしき日という事で、大変豪勢だそうです。内容は来てからのお楽しみだと……」
 
「そうか」
 
「………え……?は?」
 
またまた状況が飲み込めないアレン。
 
そこに去り際の使用人が爆弾発言を投下した。
 
 
「アレン様の伴侶様の為ですもの、きっと今までにないくらい盛り上がりますよ。おめでとうございます、アレン様」
 
 
バタン、と静かに扉が閉まった。
 
「…………おいおまえ」
 
「何だ?」
 
「何だ?じゃない!!一体どうなってんだ?!」
 
先程からありえない単語を聞き過ぎている。
一目惚れ?好き?新しい家族?伴侶……?
 
「まさか………」
 
「これからよろしくな、旦那様」
 
「だっ………誰が旦那様だぁぁぁ!!!!」
 
 
 
クモのアレン花嫁計画は着実に進行しているのであった。
 
 
 
 
 
 
→後書き
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