CP,all

□春の悪魔
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だんだん暖かくなってくると、アレになる人が増えてくる。
それは西浦高校野球部部員にも例外ではなく。
既に何人かはアレになっている。この時季だけのものではないのに、今が1番多い。
あぁ、春が憎い。






春の悪魔





「っくしゅん!!」

「あれ、巣山花粉症?」



巣山と向かい合って昼食をとっていた栄口がそう訊ねた。
辺りを見回すと、鼻をかんでいたり巣山と同じようにくしゃみをしている人がいた。
もしかしたら風邪の人もいるかもしれないが、多分殆どの人がアレ、花粉症だ。
花粉症の人は大変だな、と思いながら栄口は再び巣山に視線を戻した。




「俺はそんなに酷い方じゃねぇけどな。あ、泉が酷かった」

「そう言われてみれば・・・そうだな」

「よ、2人共、何話してるの?」

「西広と沖か。あのさ、」




1組に遊びに来た沖と西広に栄口が今まで話していたことを説明した。
すると沖は何か思い出したらしく、そういえばと口にした。



「水谷はくしゃみも酷いし、目も痒いとか」

「この間の練習の時目、真っ赤だったもんな」



巣山は笑いながら、今度からうさたんって呼ぶかと付け足した。
その発言が発端となり、他3人も笑いだした。
この際、まわりからの視線が痛いことは気にしない。




「・・・おーい、お前ら」

「あはは、み、水谷がう、うさ・・・」

「栄口くーん?」

「巣山、さいっこー・・・くっくく」

無視すんじゃねぇよっ!!

「はー、あれ、花井いたんだ」




4人が笑い始めた頃、花井は普通に教室に入って来た。
それにもかかわらず、栄口達の中で誰1人として花井のことに気がつかなかった。
1人くらい気づいてくれるだろうと思っていた花井はそのことが頭にきたのだ。
そして、栄口が反応したときの笑顔を憎く感じたのだった。




「ひでぇよ、お前ら」

「ごめんごめん。てか用事あるんでしょ?」




西広は咳払いをして花井にそう訊いた。
まだ怒りはおさまっていなかったが、いつまでもそうしているわけにもいかないので、1度大きなため息をついて再び口を開いた。





「今日ミーティングだけになったから」



それだけ伝えると、花井は1年1組をあとにした。



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