鋼/錬

□逃げ出せない...?
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普段使われることのない小さな会議室。
そこに、自分の仕事(書類)から逃げてきたロイがいた。
窓は1つしかなく、今は日が陰っていて部屋の中は暗かった。
何かすることがるのかといえばそんなこともなくて、
ただ会議室の1番奥の壁に背を向けて立っているだけだった。


ロイ自身、この場所に来るのは初めてで、
直ぐに誰かが見つけられるとは思ってもいなかった。
だが、その思いは打ち砕かれてしまう。

「こんなところにいらしたのですか・・・」

聞き慣れた声がしてドアの方を見ると、そこにはリザがいた。

「かくれんぼじゃないんですから」

大きな溜息を吐いて、一歩ずつロイに近づいていった。
まだかろうじて怒っていなかったが、もう一押しすれば分からない。
じりじりと迫ってくるリザに、ロイは躊躇うことなく近づく。

「なぁ、どれくらいで終わると思う?」

「大佐のやる気次第です。さぁ、戻りましょう」

「・・・嫌だ、と言ったら?」

「無理矢理でも連れて行きます。もしかして、これで撃たれたいのですか?」

愛用の凶器(銃)を右手に持ち、撃つマネをしてみせた。
無防備なロイが、もしそれで撃たれたのなら確実に死ぬ。
それだけは避けたい。

―すぐ戻ります。とだけ言った。


机の上にたまった書類は、座ったロイの目線の上まで山積みになっていた。
どうして、ここまでため込んでしまうのか。
己の行動に反省しつつ、黙々と書類をかたづけていった。



辺りは薄暗くなり、部屋には明かりがついていた。
少しずつ人が減り始めて、気が付けばロイとリザの2人だけになっていた。
よくある光景だが、本当によくありすぎて・・・・・・
表情ひとつ変えずに、ただ書類のチェックをするリザの姿は頼もしかった。

「お疲れ様です」

「あぁ、君も・・・な」

「でも・・・逃げずにやってくださっていたら・・・」

「すいません、もう何も言わないで下さい」

僅かに、リザから溢れている黒いオーラを感じた。


明日も、何事もなく無事に過ごせますように・・・
ただ、それだけを祈った。



*あとがき*
―――――――
日常をテーマにしてみました。(自分の中で)
逃げ出したのに、結局はリザさんが見つけちゃうみたいなのを書いたつもりです。
そして、一度捕まったら決して逃げ出せない・・・ということで。
人様の甘いのを見るのは大好きなのですが、どうも自分では書けないようです。
今更言うことでもないのですが、タイトルがまったく決まりませんでした。
ネーミングセンスの欠片も無い子なので、毎回タイトルはおかしいと思います。
→08.03.25(作成日は2007年3月下旬)

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