鋼/錬

□懐かしい場所で逢いましょう
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ロイとその部下がバラバラになって1ヵ月。
それぞれが新しい場所で新しい仲間と共に仕事をすることに慣れているだろう。
ロイは副官がいなくなってからは、毎日が忙しく殆ど休む暇がなかった。



ある日、廊下で2人はすれ違った。





「大佐?」

「あぁ中尉か。久しぶりだな」

「・・・仕事、サボってませんか?」

「残念ながら忙しくてできないのだよ」






ハァとため息をついて目を伏せた。
今まで、リザのおかげで少し楽が出来ていたのだから当たり前である。




「そうですか」

「あ、そうだ中尉」





何ですか?と言い終えた時には、既にロイは視界に入っていなかった。
体は目の前にあったが、顔はリザの耳元に近づいていた。





「ん・・・息がかかってるのですが」

「まぁ少しの間だからそのまま聞きたまえ」




久しぶりに耳元で聞くその声に、リザはドキッとした。





「今日は何時まで仕事なんだ?」

「えっと・・・8時くらいまで、ですけど?」

「終わったらあそこに来てくれないか?」

「あそこ・・・ですか?」

「あぁ。それじゃあ」






耳元から顔を離して、何事もなかったかのように歩きだした。
ロイがいなくなったあと、暫くリザはそこから動くことができなかった。
先程まで顔が近付いていた場所をおさえて立ち尽くした。












最初に告げた時間どおり、リザはある場所へとやってきた。
そこはかつて、逃げ出したロイが隠れていた小さな会議室。
あれから何度かこの場所に来てはロイを連れ戻していた。




「ここ・・・よね?」





扉を開けると、中は真っ暗でしんと静まり返っていた。
こんなところにロイがいるとは思えない。






「た・・・ぃ?!」

「つかまえた」





前ばかり見ていたリザは、後ろから近づいていた人物に気がつかなかった。
名前(正確には階級)を呼ぼうと口を開いた直後、
突然リザは後ろから何者かによって抱きしめられた。



そんなことをしてくる人物は1人しかいないのだが。



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