鋼/錬

□予報外れて
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何十分も前に少しだけ飲んだコーヒーを一口飲むと、温くて苦い味が口いっぱいに広がった。
コーヒーがこんな風になるまで待つとは、喫茶店に入った時は全く思っていなかった。
リザはそのコーヒーを一気に飲んで溜息をついた。


仕事の忙しいロイは、休日でさえ出勤していて帰ってくるのも遅い。
今日は仕事が昼までだから午後会わないか、と言われリザは待ち合わせ場所であるこの喫茶店で1時間は待っている。
時々、携帯を開いて新着メール問合せをするが、メールを受信することはない。
何度か繰り返していると、1件だけメールを受信した。
そのメールは・・・ロイからだった。急いで打ったのか、記号が使われていなくてただ一言『もうすぐ着く』とだけ書いてあった。
返事をしようと本文に入力を始めたら、お店の扉が開く音が聞こえた。
入ってきた人の足音がこちらに近付いてきたので顔をあげると・・・



「遅くなってすまない」

「いえ。お疲れ様です、ロイさん」



スーツで大きめの鞄を持ったロイが早歩きでリザの座っている席に来た。



「何か頼もうか?」

「あ、大丈夫です」

「じゃあ、とりあえず出ようか」



ロイは来たばかりなのにすぐに出るのは申し訳なかったが、既に1時間もここにいるリザは首を縦に振った。
外に出ると、傘をさしても足元が濡れてしまうくらい雨が降っていた。
天気予報を確認していなかったリザは、家を出た時に雨が降っていなかったので傘を持っていなかった。
だから今、ロイが持っている傘にリザも入っている。所謂・・・相合傘ってやつをしている。
特に行くところもないので、2人はロイの住んでいるマンションに向かっている。
お互い荷物を持っている為手は繋いでいないものの、濡れてしまうので体は密着している。
話していればあまり気にすることは無いのだが・・・何故か付き合ったばかりの頃のようにリザは恥ずかしそうにしている。
それに気付いているのか、ロイは笑うのを耐えていた。



「・・・分かってるなら笑っても良いんですよ?」

「ホント可愛いんだから、リザは」

「なっ?!そんなこと言っても何も出まっ」



リザの言葉を遮るかのように不意に重なった唇。
それはあまりにも一瞬の出来事で、リザを瞼を閉じることが出来なかった。
勿論、顔は真っ赤になっている。



「いい加減、パターン読めるだろ」

「ですけど!でも、その・・・」

「・・・分かってるよ。リザはそういう子だもんね」



ニヤリ、と笑うとロイは傘を閉じた。
その行動にリザは驚いたが、すぐに雨が止んだのだと分かってあいているロイの手を軽く握った。




予報外れて

(幸せならそれでいいと思う)







*あとがき*
―――――――
学校帰ってきて1時間くらいかけて書きました。またまた現代パロに逃げた私←
本日ロイアイの日ということで!!間に合って良かった;ほのぼのより少し甘い感じになってれば良いなーと。
私、『ロイさん』って呼び方が好きなんですよ。(どうでもいい)原作の『マスタングさん』ってのも好きですが^^
相合傘ネタは振りでもやりましたが、こっちの方がベタですな(ぁ
→09.06.11

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