BLOOD OF VAMPIRE
□第三話
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日も沈み人のいなくなった街道をサタンは煙草をふかしながら歩いていた。
一、二時間前までの騒がしさは影をひそめ静寂が辺りを支配していた。
太陽が出ていないにもかかわらず、サングラスをかけたまま前を見たサタンの目に、ちらりと動いた影が写った。
「出たか・・・。」
そうつぶやくとサタンは煙草を吐き捨て歩調を早めた。
すると影は動きを止め、口を開いた。
「アンタがサタンかい?」
低い声でそう言うと、影はサタンに近付く。
「だったら?」
サタンはにやりと口元を曲げる。影も口元を曲げたようだった。
「悪魔王のその力、拝ませてもらうぜ!!」
叫び声が聞こえたその瞬間、影はサタンへ突進した。
サタンが横へ跳ぶよりも早く、影の拳はサタンの腹をとらえた。
「ッツぅ!」
サタンはうめき声をもらし後ろへ下がる。
影の姿は、はっきりと見えるようになっていた。
逆立てた茶色の髪、つり上がった鋭い目、そして吸血鬼の証拠である牙。
「オレはティッド。アンタの敵だ。」
ティッドと名乗った男はそう言うと、ゆらりと立ち上がった。
「ロードの手下か・・・。」
サタンは血の塊を地面に吐き捨て、ティッドをにらんだ。
ティッドは笑みで返した。
「だったら?」
声が聞こえたときにはすでにティッドはサタンの目の前にいた。
ティッドの拳がサタンの腹に入る。
二発、三発。
それでもティッドは拳打をやめない。
「あ?こんなモンで終わりか?悪魔王さんよォ。さっきまでの軽口はどうした!!」
ティッドの裏拳を胸にまともに喰らったサタンは二、三歩よろめいて立ち止まった。
「なァんだ。ったくよ、ロードが一目置いてるようだから来てみりゃこんなモンだとは。ムダ足だったぜ・・・。」
大きなため息を一つ吐くとティッドは後ろを向いて歩き出した。
「オレは・・・ハンターだ。」
おもむろにサタンは口を開いた。
ティッドも振り向く。
瞬間。
サタンの渾身の一撃がティッドの顔面に入った。
「・・・・ッ!?」
短く鈍い音が辺りに響く。
ティッドは十メートルほど吹き飛んで倒れた。
「ヴァンパイアは狩るんだよ。馬ァー鹿。」
サタンにティッドの拳打はまったくといっていい程効いていなかった。