文章。
□銭湯情景〜セントウ・シーン〜
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「うわぁっ、すいません!」
相手への謝罪もそこそこに、床に這いつくばって百円玉を探すヘイハチ。
必要最低限の金しか持ち歩かない主義の彼は、本日も入湯券(10枚綴りを買うと、一枚オマケが付く)と百円玉一枚しか持ち合わせて居なかった。
文字通り、代わりは居ないのである。
(……うぅ〜……)
半泣きになりながら必死に百円玉を探していると、背後から声を掛けられた。
「……見つけた……」
「えぇっ!」
私の百円玉、否、私の幸せを見つけてくださったんですか!?
這いつくばった姿勢のまま、満面の笑みで振り返ると、そこには何処かで見たような、金髪でバレエダンサーの様な体型の男が硬直していた。