「ったく、めんどくせぇ」


ポツリと呟いた言葉は人気の少なくなった廊下によく響いた。


プリントをもった手が少し痺れる。なぁ、量多くね?これ。俺の気のせいかな?









俺、土方十四郎は本日やむを得ない理由で遅刻をした。

そのせいなのかなんなのか、帰りに提出しなければならない理科のプリントを全員分集めて渡す係りに任命されていた。


学級委員長の志村妙に文句を言えば、「あら、土方君。私の記憶だと確かあなたは理科係だったわよね?」と真っ黒な笑みで返されて口を噤むしかなかった。


言われてみれば、そうだったような気がしないでもない。
いや、多分そうなんだろう。




「めんどくせぇ」



クラス担当の理科教師の堅物そうな顔を朧げに思い出しながら再び同じことを呟いた。







そんなわけで俺はプリントを運んでいるわけなんだが。


ガランとした廊下。今日に限って居残る生徒はいないのかしんとし過ぎて耳鳴りがするくらいだった。



何か、異質な空間に放り込まれたような、感覚。

決していい気分ではない。




「…………」



こんなときに限って思い出してしまったのは、クラスメイトが教室で騒いでいた学校にまつわる怪談話だった。










[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ