睡夢

□ヒトガタ
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あのあと、さっさとその場を引き上げた3人はとりあえず解部の部長室から禁忌の森にある自宅へと向かう。
禁忌の森。
そこは木の葉の里の北に位置する砦的な役割を持つ森だ。
森全体に禁術クラスの結界に幻術、トラップ(罠)が張り巡らされている上、獰猛な肉食植物・動物、巨大な昆虫など「普通」ならお目にかからない(いき)ものがわんさといるのだ。
森自体が天然の要塞に、生き物が天然の罠。
その上最強の結界。
これらをすべて潜り抜けたとしても、里を襲うような体力など残ってはいないだろう。
稀にクリアするつわものもいるが、残念かな。
陽と影の影分身(実体を持たせている術者のコピー)が待ち構えていて侵入を食い止めてしまうので侵入は事実上不可能である。
そんな場所だからこそ、二人は安心して住める。
影と陽は小さなときから狙われていたから。
それは、物心のつく3歳になる前から。
陽は「化け狐」といわれ、九尾の狐という化け物の封印の器に選ばれてしまったがために。
影は「知能指数400以上」という異常な脳をもち、それを使いこなすために。
そのどちらも自分が選んだのではない。
片方は自我のないころに他人・・それも父親の手で押し付けられ。
片方はそれこそ生まれながらのものであるため恨みようもない、それこそ不条理に。
彼らは似ていて違うもの。
そして彼らは知っている。
この見かけだけは平和で明るくやさしい里も。内実は異能や異分子を酷く嫌う、排他的な里だということを。
だから、ここに住む。
誰も入ることが出来ないように。
安心して生きるために。
安心して休めるために。
二人だけの住処に、もう一人迎え入れたのはおんなじだったから。
同じ異能にひかれたのか、それは誰もわからない。
一緒に居たいから。
ただ・・・それだけ。
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