1

□tomorrow is‥‥
1ページ/1ページ




「………この日だけは、依頼来ないで欲しいなぁ…………」
カレンダーを見つめながら成歩堂は呟いた。

そして、できればこの日が何の日なのかは、誰にも、というか真宵達に知られたくなかった。


「だって……きっと君もそうだろう?」
成歩堂は、誰かに語りかけるように、そう呟いた。


tomorrow is‥‥



きみを喜ばせる。

難しそうで、簡単そうで。

どうしようか。
何をしようか。

何を贈ろうか。
なんて言おうか。

ねぇ、男は大変だね。
こんな時は、本当に悩む。

さぁ、どうしようか……?



ますます寒くなってきて、道行く人々も コートやマフラーを身につけて、足早に街を歩く中。


成歩堂は、街中をぶらぶらと歩いていた。
「………服。ダメだ、ぶたれる。……アクセサリー。…そういうの分かんないしなー……」
ブツブツと独り言を言いながら、立ち並ぶ店を覗いていく。
そして。
「……何してるの、こんなところで。」
「……ぇ。」




振り向くと、そこには たった今 考えていた『彼女』がいて。
「……君こそ、何してるの?」
「ただの散歩よ。悪いかしら。」
「……いや、悪くはないけど……」



彼女もまた、冬らしい格好で、マフラーをいじりながら 立っていた。
「それで? あなたは 何をしていたのかしら? ブツブツ 独り言 言いながら?」

どうやら、目撃されていたようだ。
「……ちょっと、買い物に、ね」
「……何よ、つまらないわね。あなたの事だから また事件を追っているのかと思ったのに」
「僕にだって 休日はあるよ。」
そう言って、成歩堂は苦笑した。



「………………そうだ。」
「?」
「実はさ、少し相談にのってもらいたいんだけ「断るわ」
彼女が即答した。
「何で私が、敵であるあなたの相談にのらなきゃならないの?」
「てき………。」
それは少しヒドいんじゃないか、と成歩堂は思う。




「ちょっとの間だけだから。ね。」
そう言って、彼女が反論する隙も与えず、成歩堂は話しはじめた。
「……実は、知り合いの女の子にね、もうすぐ誕生日の子がいるんだ。プレゼントをあげたいんだけど……僕、女の子が喜ぶ物とか、解らないから。君なら、何が嬉しい?」




そこまで言って、成歩堂はちらりと彼女を見た。(……感づかれてない……かな……?)
「………驚いたわ……。」
「……ぇ。な、何が?」「まさか、あなたに女の友人がいたなんて………!」
「…………(な、泣きたい…。)」




成歩堂は 涙をぐっと堪えて、もう一度 彼女に質問した。
「……例えば、君なら 何が嬉しいかな?」
「……何よ、立ち直りが早いわね。」
(立ち直ってはいないんだけどね………。)
成歩堂の目頭が熱くなる。



「…………そうね、私なら……。」
彼女は 横を向いた。
「?」
彼女が見つめる先には、小さな花屋があった。
「………私なら……ユリ、かしら。」
「ゆり?」
「そうね、ユリの花束がいい。」
「………あぁ! ユリって花の名前?」
「……あなた、そんなことも知らないの……?」「いや、だって……。」

尚、成歩堂は、ヒマワリとチューリップしか 花の名前を知らない。




「………仕方ないわね、来なさい。」
彼女は 呆れながら 花屋の方へ歩きだした。





「……これよ。この花が、ユリ。」
「へぇ………。」
成歩堂は 初めて見る その花をしげしげと眺めた。
「君は、何でこの…ユリ、が好きなんだい?」
「………そうね………見た目もあるし……けれど……一番の理由は、ユリにまつわる伝説かしら。」
「伝説?」





「『ユリは、気高く白い姿を投げ出して、悪い魔法に打ち勝つのだ』……昔 読んだ本に、そんな言葉があったわ。」
彼女は 白く美しいユリをじっと見つめながら 言った。
「………私も、そうなりたいと思った。例え 自分の事を投げ出してでも、嘘を暴き、真実を導き出す………私にとって、ユリは目標なのよ。」
「………へぇ……。」





「………少し、話しすぎたわね。」
彼女は言って、成歩堂の方を見た。
「私は もう行くけれど。何か言う事は?」
「あぁ。ありがとう。とても 参考になったよ。」「それでいいわ。」
彼女は少し笑って、背中を向けた。
「またね、冥ちゃん。」「……えぇ。」





――数日後。



とある花屋にて、ユリの花束を購入する成歩堂の姿があった。
成歩堂は、手の中にある美しい花を見ながら ふっと微笑む。




さて、君はどんな顔をするかな?


明日が楽しみだ。



だって、明日は、



大好きな君の誕生日。


END




〔あとがきという名の言い訳〕
長いです! 書きながら ちょっと後悔しました(笑)ナルメイってなんか 自然に話が長くなります……しかも キャラが未だに掴めてない、話がぐだぐた、ユリの伝説を上手く 使えてないという 三重苦……(泣)。
こ、ここまでありがとうございました!




 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ