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□あなたとならば、どこまでも。
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「──いよいよだな。」
アンブレラのロシア支部へ向かうヘリコプターの中、クリスが言った。
「そうね。」
ジルは窓の下に広がる白い世界をぼぅっと眺めながら答えた。
「だが、これひとつが終わりじゃない。気を引き締めて行くぞ。」
「ええ。」
ジルは窓を見つめたまま言った。
「……どうしたんだ?調子でも悪いのか?」
「いいえ。」
「嘘をつけ。」
ジルは窓に顔を向けながらくすりと笑った。
「調子が悪いわけじゃないの。本当よ。」
「なら、どうした?」
「……怯えてる、のかもしれない。」
「怯えてる?」
「笑ってもいいのよ、別に。」
ジルは続ける。
「知らなかったでしょ、クリス?私って、臆病者なのよ。自分が怯えてるのを分かってても、適当な言い訳を探して、目を背ける。私は強い、怖いものなんか無いって。実際は、真逆なんだけれどね。」
「……………。」










「そんな私が戦うなんて、笑うでしょう……?」
「何故だ?」
「?」
クリスは腕を組み、ジルを見つめた。
「あんな化け物みたいな奴らと戦うんだ。怖くないなんて言う奴はいない。」
「……なら、あなたも怖いの?」
クリスは視線を宙に向け、言った。
「………怖いんだろうが……正直言って分からない。」
「分からない?」
「俺も恐らく……いや、確実に恐怖を感じているはずだ。だが、お前と同じで、自分で言い訳して、それを隠しているのかもしれん。」
クリスは再び、ジルを見つめる。
「ジル、聞いてくれ。俺は決して、強くはない。俺は、弱いんだ。」
「…………。」
ジルは首を振った。
「……あなたは弱くなんかない……。」
「いいや。俺は弱い。人ひとり、守ることが出来ないからな。だから、ジル。俺はお前を守ることは出来ない。」
クリスはジルの瞳を見つめ、すまない、と言った。
「だが、守ることが出来なくても、共に戦うことは出来るだろう。」
「……!」
「お前が弱くとも、俺が弱くとも──弱い者同士、共に戦える。」










クリスはふっと笑って、言った。
「だからお前と俺は、これからずっと、同じ場所で、共に戦う。お前が戦う時は、俺がお前の背中を守ろう。お前がいるところに、俺がいよう。」
ジルはその言葉に、目を見開いて──閉じて、微笑んだ。
「──本当に?」
「あぁ。」
「これからは、一緒なのね?」
「あぁ。」
「ねぇ、クリス。それってもしかして………、」
クリスはちらっとジルを見やると、窓のほうに目を逸らした。
「──ありがとう、クリス。」
ジルはクスクスと笑いながら言って、自分も窓に視線を移した。










怯えている、恐怖を感じている、事実だから仕方ないのだ。だが、もう考えるのはよそう。もう戦うことに迷わないでおこう。
「……もう着くわ、クリス。」
「あぁ。」
今は、彼がいる。彼がくれた言葉が、





不器用なクリスなりの──遠まわしな、プロポーズがある。
「──さぁ、行きましょう。」
ジルはそう言って、アンブレラ ロシア支部へ降り立った。





[あとがきという名の言い訳]
はい、ぐだぐだー。どんなプロポーズだよ。ちょっと甘いのにしたかったんですが………。
はぁぁぁ?ど・こ・が?って感じですね(-_-;)




 

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