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□惰眠を貪る
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「ん〜っ屋上で食べるメロンパンは格別ですなぁ!」

木乃は学校の屋上でメロンパンをほおばっていた(そりゃもう口いっぱいに)。

「語尾、変。それにどうせ木乃はどこで食べてもおんなじこと言うでしょ」

エルメスが素早くつっこんだ。

「ふとふぁっぷひはひゃかんふぁいひょ〜だ」
「何言ってるかわかりませ〜ん」
「こんにちわ、木乃さん」
「ふぐぉっ!!」

いきなり声をかけられて(しかもエルメスと話している時に)、木乃は思いっきりせき込んだ。

「…ッ! ごほっ」
「だ、大丈夫かい!?」

木乃は必死に元・メロンパンを呑みくだし、涙目で頷いた。

「だい、じょぶれす…」
「すまない、驚かせてしまって」

静は申し訳なさそうだ。あれだけ目を白黒されれば当然かもしれない。

「どうしたんですか? 今日もサボりですか先輩?」

ようやく落ち着いた木乃は静に尋ねた。

「ん? まあね。木乃さんのクラスが自習になったと聞いたのでね」

笑顔で答える静に、

(どっからそんな情報を? 急に自習になったのに)

と、エルメスは疑問に思った。

「そうなんですかー! さすが先輩です!」

嬉しそうな木乃にも、

(さすがって何が?)

とツッコミながら、エルメスは木乃の身を案じた。

「今日はいい天気だね」
「はい! 絶好のお昼寝日和だな〜って朝から思ってたんです」

(朝から昼寝の事考える? 普通)

唯一のツッコミと言える存在のエルメスはしかし口に出す事はできない。
そんなストラップの心中など関係なく静も楽しそうに言った。

「じゃ昼寝しよっか」

(ぇえええなんでだよ!!)

「わぁ〜いいですね!」

(イヤイヤ! だからなんで!!)

彼(?)が人であったなら豪快に両手を振っていたに違いない。
そんなエルメスをよそに、ころんとその場に寝転んだ木乃を、静は幸せそうに見つめている。

「木乃さん、おいで」

同じように寝転んだ静は、木乃を呼んだ。

「?」
「そのままだと痛いだろう?」

にっこりと微笑みながら自らの腕を指さす。

「だから、ほら。枕」

きょとんとしていた木乃だが、意味を察して頬を朱に染めた。
エルメスは、

(寒ッ!!)

と震えた。

ちょっと悩んでいた木乃だが、おずおずと静の腕に頭を乗せた。

「あの〜重くないですか?」

見上げてくる木乃に、静は可愛くてたまらないといった表情で答える。

「全然。木乃さんは軽いからね」
「はあ…」
「ほら、昼寝しよう?」

戸惑いがちな木乃(当たり前)の頭を撫でると静は目を閉じた。
木乃も習ってすぐに寝息を立てはじめた。

普段は騒がしいこの学園もこの瞬間だけは平和である。
と言っても、

(アツいのかサムいのかわかんない! この状況辛いんだけど!!)

と、とあるストラップだけは不満そうであったが。











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