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□『勇者=オレ』について。
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廊下に出ると、いつもの顔。
眉間にシワを寄せて、仁王立ちをして オレを正面から見つめている。
「おぉ、ムチコか。」
「………………。」


茨城が黙ったままだったので、オレはそのまま 職員室へ向かおうとした。
「……納得いかない。」
「あー?」
「何で あなたみたいな人が教員になれるんですか? 何でこの学校にいるんですか?」
「魔王が手続きとってくれた。」
「それに何なんですか、勇者学って!? 今まで授業らしい授業してないじゃないですか!!」




人差し指をオレに突きつけながら、茨城は叫ぶ。
「ふっ……授業? 授業ならもう十分してるじゃねぇか。」
「は?」
「勇者を学ぶなら、オレを見て学べ。つまり、オレが教室にいる時点で 授業なんだよ。」
「………納得いかないわ。」
「何がだ?」




茨城はオレを睨みつける。
「あなたの勇者らしい所が見受けられない。しいて言うなら 格好くらいしかありません。」
「何 言ってんだ? オレは何から何まで勇者だぜ?」


「だからっ!! それが納得いかないって 言ってるの!!!」
叫ぶ茨城を無視して、オレは言う。
「そうだなぁ、オレが勇者らしくない所を しいて挙げるなら……」
「少しは人の話を聞いて下さい!!」
「何だと思う、ムチコ?」
「はぁ!? ありすぎて わからないわよ!!」
「そっかそっか。なら これは宿題だな。」
オレがそう言うと、茨城は驚いた顔を見せて、すぐにその難問に挑戦した。 本当に負けず嫌いな女だ。





オレはそんな茨城に構わず、職員室へ向かった。後ろから茨城が、自分なりに考えたらしい答えを投げかけてくる。
「……生徒想いじゃないところ。」
「ハズレ。」
「剣は持ってるくせに 盾は持ってない。」
「ハズレ。」
「……魔王を倒した事がない!」
「ハズレー。」
「……もうっ!ヒントくらい くれてもいいじゃない!!」









オレが、勇者らしくないところ、それは。




君のためならば、世界も冒険も、投げ出したって構わない事。

end



〔あとがきという名の言い訳〕
ものの30秒ほどで考えた鋼野×茨城です
鋼野は とりあえず オレは勇者だ的な事 言わせてりゃいいかなと(笑)。
ここまで ありがとうございました。




 

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