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□雪
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彼の、紅くて綺麗な、長い髪は、時折吹く風に揺れていました。
何故かは、分からないけれど、何だか、そのまま溶けていってしまいそうで。
私は、彼がいなくならないように、消えないように、彼の手をぎゅっと握っていました。



「そう………戦いなんか、終わらなきゃいい。少しの間だけでも、お前といれるなら、それで……」
「え………?」
彼は、私の手を握り返していました。
彼を見上げると、彼はさっきと同じように 微笑んでいました。ただ、その微笑みは、本当に少しだけ、哀しみを帯びていました。




彼の言おうとしている事がわかって、季節の流れを感じる雪が、何だか切なく感じました。
時間がゆっくり流れればいいのにと思いました。
私がそう思うのは、やっぱり。
この戦いの後に、私達は別れてしまうのだろうと、私も心のどこかで 理解しているからかもしれません。



冬が終われば、春が来る。当たり前の事ですが。
このままであればいいのにと、いっそ、時間が止まればいいのにとさえ、思いました。





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