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□時々は、忘れて。
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「…ぁ…!」
その人影がこちらに 入って来る様子はない。
イレースは立ち上がって、数歩 歩いて、テーブルの方を振り返った。
「…あの……残しておいてもらえますか?」

もう随分遅い時間だが、月明かりのおかげで、周りはよく見えた。
彼は、木にもたれ掛かって月を見上げていた。
「シノンさん。」
「…イレース?どうした、料理はまだまだ残ってるはずだろ?」
シノンは心底 不思議そうな表情をした。
「はい…でも、少しだけ 休憩を…」
「きゅうけ…」
シノンは 呆れ顔で言う。
「イレース…バレる嘘は止めとけ。」
イレースは首を傾げた。
「お前 まだまだ余裕で 食えるだろ。顔で分かる。」
「…確かに…まだまだ食べれます。」
イレースがそう言うと、シノンは くくくっと笑った。


「シノンさんは…食べないんですか…?」
「ああ。ああいう騒がしいのは どうにも好きになれねぇ。」
そのかわり、と言って、シノンはワインとグラスを取り出した。
「こっちで酒飲んでる。お前もどうだ…って、お前は酒飲めねぇか。」
イレースが頷く。
「よく…わかりましたね。」
「何となく、としか言いようがねぇな。」



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