・8話目のその後・・・







取り敢えず錯乱した佐助を取り押さえ座らせお茶を飲ませると何も端折る事もなく、一から詳しくきちんと順序よく話す事にした。


「まずはある日、俺が一人で遠出したあの日何があったかは分からんが気付けば犬になっていた」

「それはもう可愛らしいショコラブラウンの小さな犬でした」

「食うのも困りつつもなんとか様々な方法で細々とその日その日を乗り越えていく毎日の中、最早己が犬か人か分からぬ程に心身共にすり減っていた」

「そんなある雨の日、心身共に疲れた私がつい出来心で階段下にて震えている犬を拾いました」

「まっこと久々の温かな寝床の感動は今でも忘れてはいない」

「んで、そんな可愛らしいペットに対する直接的愛情表現として私は口づけを選びました。するとどうでしょう。目の前には真っ裸の青年が」

「それが俺、というわけだ。分かったか佐助」


長い説明に佐助は少しだけ眉間に皺をよせ、こめかみに手をつき分かりやすく困惑と思案のポーズをとる。
流石にこんな話信じてもらえるとは思わないわけでもないが、過去から来たという人ならば信じてくれない事もないかと期待する。
なんたって過去から未来にきたのだ。
そんなのに比べれば犬になるなんて小さなことだろう、なんて思ったりもしないでもない。


「あー…、おっけ」


佐助は眉間に指を当てぐりぐりと揉み解しながらそう言った。
絶対分かってない気がする。
けど分かろうと努力しているのは信じようじゃないか、佐助よ。


「つまりは旦那は犬だったわけね」

「………は、ってどういうこと。旦那はって」

「俺様はカピパラだったからさ」


盛大に吹いた。
お茶を。
気管に入ったお茶の所為でげっはげはと咽ていると不思議な顔をした真田が新しくお茶を差し出した。
少しずつそれを飲み、ようやく落ち着いたところでやっぱり聞き間違いではないだろうかと思い恐る恐る口を開く。


「あの、えっと、聞き間違えちゃったかも。真田は犬で佐助は?」

「カピパラ。知らない?」

「………あの、世界最大の…アレだよね」

「そう、ネズミ」


今度は真田が吹いた。
それはもう盛大にぶわっはぁーと。






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