心のゆくえ

□プロローグ
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プロローグ






1年7組は今現在、朝のSHRを行っていた。
先生が出席を取り、今日の連絡事項を告げる。ただそれだけだ。
日直の号令とともにそれが終われば皆席を立ち、友達と話したり、他クラスに行ったりする。
だが、窓側一番後ろの少女は読書をし、その隣の席の少年はずっと寝ている。
「桐生。ちょっと来なさい。」
少女は担任に呼ばれ、本にしおりを挟み机に置き、音も立てずに静かに席を立つと廊下へ向かった。
廊下に出ると担任は機嫌良さそうに少女に言った。
「この間の全国模試の結果が出たんだが、桐生、一位だったぞ!!しかも、満点だ!!おめでとう!!君は我が校始まって以来の優秀な生徒だ。先生方皆期待してるから次も頑張れよ。」
担任はそう言って少女の肩を叩いた。
少女はその話を訊いても眉一つ動かさなかった。照れ隠しでも、そのことを鼻にかけてるわけでもない。嬉しいとか、達成感、ましてや優越感など全然感じられなかった。少女はただ結果を訊いただけ、自分とは関わり合いのない人のことを訊いている。そんな風にみえた。
「ありがとうございます。ご期待に応えられるよう頑張ります。」
少女は社交辞令の如く機械的にそう言った。担任はそれを訊き満足したのか、「うむ。」と肯いて去っていった。
少女は担任の背中を見送ることなく教室に戻っていった。

席に着くと、少女は読みかけの本を開き読み始めた。
少女の隣の席の少年はさっきと同様机に突っ伏して寝ていた。
少年は入学してから毎日、教室の自分の席に座ると寝ている。朝来てからずっと。授業が始まっても彼は殆ど起きてはいない。起きていたとしても授業なんて訊いてはいない。少女の向こうにある窓をボーっと眺めている。だが、少年の目には空など映ってはいないのだろう。





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