心のゆくえ

□前半
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春、四月。

 入学式、新入生を歓迎するように桜の花は見事に満開だった。



学校の正門を潜ると緩やかな傾斜が続いている。その傾斜にはソメイヨシノが何十本も植えられていて通る人誰もが思わず足を止めてしまうほど見事だった。だが、今、この坂道を歩いてくる少年は違った。少年は桜に見向きもせずポケットに両手を突っ込み、アスファルトの斜面を何も考えず見つめていた。



少年が体育館前に着くと、受付の先輩たちからクラス表のプリント等を受け取り、体育館に入っていく。
そのプリントに目を通し自分の名前を探す。名前が見つかったらしく少年は顔を上げ歩き始めた。入って一番左側に進んで行く。
どうやら少年は1年7組らしい。

少年はクラスの適当な席に腰掛ける。
周りは元中の友達やもしくは既に友達を作っているなどして、固まっていた。
少年は周りを気にすることなくボーと椅子に座っている。
少年に声をかける人はいない。否、少年が声をかけさせる隙を人に与えないのだ。少年は傍から見るととても近づきにくい容姿をしていた。髪は色素の薄い栗色の髪、瞳は瞼が重いのか殆ど見えない。生気が余り感じられない。だがとても綺麗だ。生き人形がそこに座っているようだった。
少年は退屈なのか、一つ欠伸をすると、ざわめきを子守唄に瞼を下ろした。




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