捧げもの
□夜遊び
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地下駐車場からエレベーターで18階に向かったウルフとフォックス。エレベーターが開く前からコインの音や様々なお客の歓声などが聞こえてきた。
「賑やかだな」
「これがいつも通りだ、迷子になるんじゃねえぞ」
「子供扱いはよせって」
「大人の遊びを知らねえ奴が意地張ってんなよ。んなことより現金をチップに換えに行くからついて来い」
ウルフとフォックスは、スロットマシンの列を真っ直ぐ進み、ワイシャツ姿の女性がいるカウンターへと向かった。
「これで200チップくれ、それと二つに分けてくれ」
「かしこまりました」
プラスチック製にカップ二つにカラフルなチップが入っている。
「ほらよ、お前の分だ」
「良いのか?」
「帰るなら返しても良いぞ」
「わかったよ」
「俺はルーレットをやる。お前はどうする?」
「適当にまわってるよ」
ウルフはルーレットコーナーへ足を運んだ。ウルフと別れたフォックスは、何をしようか考えていた。
「ポーカーでもやるか」
以前、グレートフォックス内で通信販売の格安で手に入れたポーカー台を使ってメンバーとポーカーを本格的にやったことがあった。ペッピーがディーラーを担当し、最終的に誰がチップを多く取るかというシンプルなルールだ。この時の勝者は意外にもスリッピーで勝った時は満面の笑みを浮かべていた。
ポーカーは四人席だが、ちょうど一人分開いていたのでフォックスは椅子に腰を降ろした。
「スリーカード」
灰色の猫のディーラーがトランプを台にかざしながら言う。
「また負けた」
「畜生」
ポーカーをやっていた他の人たちが一斉に敗北の言葉を漏らした。だが、彼らの手元にはフォックスよりも何倍ものチップを所有していた。
「お客は大歓迎だよ、どのくらい賭ける?」
「10くらい」
フォックスがベット数分のチップを取り出した。
「チマチマしてるな」
フォックスの隣にいる鳥人が茶々を入れたが、フォックスは無視してチップをポッドに置いた。
五枚ずつのカードが人数分配られ、それぞれ手札を見る。フォックスの手札にはキングの1ペアがあった。
勝てる気がしないな、そう思いながらフォックスは残りの三枚を交換用として手元に用意した。他の人は手札を見つめたまま考え事をしている。
「じゃあ、私はこれでいくか」
そう言ったと同時に他の人たちも交換する準備ができたようだ。フォックスは交換用のカードをテーブルの上に置いた。ディーラーがカードを回収し素早くシャッフルした後、交換した枚数分を返す。そして、ディーラーが自分のカードを捲り始めた。同時にフォックスも自分のカードを見る
。
「ダイヤのフラッシュ」
残念ながらフォックスはキングのスリーカードだった。
「また負けた」
「強いな」
フォックス以外のお客も勝った人がいなかった。だけどスリーカードが出たことだけほんの少しばかり希望が見えたような気がしたフォックスだった。
数十分後、フォックスの手元のチップは50を切りそうになった。
「ドロップします」
「ありがとう、また来てくださいね」
フォックスは椅子を立ち上がり、ポーカー台を後にした。ちょうどスロットマシンコーナーに差し掛かったので一番簡単な三つ揃いのスロットに座った。フォックスは上限の3ベットを投入口に入れ、レバーを引いた。左のボタンを押す。止まったのは『BAR』だ。残りの二つのボタンに集中するフォックス。そして真ん中のボタンを押す。だが、止まったのはチェリーだった。
「そう上手くはいかないのかな」
フォックスは諦め顔で右のボタンを押した。