捧げもの
□夜遊び
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ちょうどその頃ウルフは、ルーレットを離れ、ビデオキノに座っていた。ウルフの手元には買った時よりも十倍ほどチップが増えていた。
「今度はこれだ」
ウルフが番号を指定する。そしてタッチパネルで入力を終えると、ウルフはスタートのボタンを押す。しかし、まだ未入力のお客がいるためゲームはスタートされない。やがてカウントダウンが始まり、残り30秒となった。時間が過ぎ、未入力のお客も強制的にゲームスタートとなった。
結果、見事ウルフの指定した六つの内に三つの番号にランプが点いたのだ。
「よっしゃ」
「あんた、ツイてるね」
「ああ、俺様の勘は良く当たるんだ。さて、今日はこのくらいにしておくか」
ウルフは軽く手を振ってルーレット台を後にした。
「重いな」
ウルフの持っているチップは先程のようなカップではなく底の深い四角いプラスチックのケースとなった。
「あいつはどこに行ったのやら……」
ウルフはフォックスを探し始めた。しかしスロットコーナー、ポーカー台、先ほどのビデオキノ、様々な場所を探しても見当たらない。ウルフは、近くに会ったソファーに腰をかけた。と、同時にウルフの頭と後ろにいた誰かの頭がぶつかった。
「痛って」
「ウルフ、もう全部使っちゃったよ」
いきなり名前を呼ばれて驚くウルフ。声の主はフォックス・マクラウドだった。
「お前、こんなとこにいたのか!?」
「だって、一番わかりやすそうだし、それに、ウルフなら見つけてくれると思ったから」
「……現金に換えてくるから待ってろ」
ウルフは嬉しかった。ライバルだというのに信頼されているからだ。だが、宇宙(そら)で出会えば戦うことは避けられないのだ。所詮ライバルなのだから。
「待たせてわりい」
「いや、気にしないよ」
「まだ時間があるな」
「こうなったらとことん付き合うよ」
「ふっ、やっと大人になったな」
「大人だよ」
ウルフとフォックスは、近くにあった館内案内に手を伸ばす。パラパラとページをめくりながら次はどこに行くか考えた。
「フォックス、お前スポーツするほど体力余ってるか?」
「バリバリだよ」
「お前ゴルフ出来るか?」
「出来るよ、だけどウルフがゴルフするなんて知らなかった」
「俺はスポーツなら何でもできる、お前みたいに軟弱じゃねえんだよ」
パンフレットによるとこの施設はカジノの他にスポーツ施設、レストラン街、ホテル、映画館等の様々な施設のマップと詳しい解説が書いてある。
「今度はクリスタルを誘ってみようかな?」
「俺よりあの女といた方が良いのか?」
「どっちもどっちだよ」
「まあいい」
ウルフはソファーから立ちあがるとエレベーターホールへ向かった。フォックスもその後について行った。