捧げもの

□お互いに
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 まだ午後だというのにカジノホールは客で埋まっている。手持ち金は困ることは無いほど持ってきている。しかし、周りを見る限り両手でチップ抱える人やケースから溢れそうなほど持っている人が多い。

「皆すごいな。こんなちっぽけなの俺達だけか」

「そんなこと言わねえでさっさと何かしようぜ」

 ファルコは女性ウェイターが差し出したシャンパンを飲み干し、グラスを返した。

「まずはお決まりのルーレットからだ」

 ルーレット台に座り、チップをオッズテーブルに置く。

「当る気はしなさそうだから赤全部で」

「俺は34、35と28,29の2目賭け」

 フォックスは赤全部、ファルコは34と35に28と29の二目掛けを指定した。ディーラーが募集を締め切りホイールを回転させる。カラン、と乾いた音と共にボールが入った。

「やっぱ俺も黒に掛けておく」

 まだベルを鳴らしていなかったのでベットの追加が可能だ。他のプレイヤーもチップを追加したりする様子が見られる。ディーラーがベルを二回鳴らし、追加が締め切られた。そして、ボールがポケットに入るとディーラーはすかさず「黒10」と言った。

「だけど配当は2倍」

「別にいいだろ、2倍の次は4倍なんだから」

「そうだね」



「アクアスの中をじっくり見るのは初めて」

「こんなに青いんだね」

 青の世界がどこまでも続く景色に呆気を取られた二人。魚の大群が上を横切ったり、それを追いかける肉食魚も見られた。その様子にスリッピーは釘付けだ。

「ここを出たら何かする?」

「ランチでもどうかしら?」

「そうだね、まだ昼食べてなかったし。フォックス達も呼ぶ?」

「あの二人夢中なのか分からないけど携帯に出ないの」

「呼んでくる?」

「邪魔しちゃ悪いから二人だけで行こう」

 再び海底トンネルを歩き始めた二人。その頃フォックス達はルーレットをやめてスロットをプレイ中だった。

「ファルコ、目押し得意だろ」

「分かってる! だが、これは別だ」

 スロットが目押しだけで当たるようになっているはずがない事は分かっているつもりでフォックスは冗談を言った。

「ああ、ズレやがった!」

「鳥は鳥なりに……」

「何か言ったか?」

「いや、何にも」

 投入口に複数枚のコインを入れてレバーを引く。絵柄を揃えようと目を光らせるファルコに対してフォックスはノリで三つのボタンを押した。

「畜生! 俺をバカにしてるのか!?」

「バカはお前だよ、機械にあたったって何も起こらない」

「……ハァ、しょうがねえな」

 溜息を吐き目押しを諦めて普通にプレイすることにしたファルコだった。
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