召喚夜に踊り舞え
□胎動
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少女は、修道院に属していた。
年は15、6だろう。
男性経験は一切無し。
手を繋いだ事すら無いという、純粋極まる身と心。
勿論。
神に仕える身なのだから、その身は絶えず穢れ無き身として厳格な世界に置かれている。
そう、交配と云う穢れなど在ってはならない身。
彼女もそう思い、男性には近寄らず。近寄らせず生きてきた。
その身を厳重に縛り、只神の側に仕える為に在ると…彼女自身そう思っていた。
なのに…
その腹は今、膨らんでいる。
無論、男性と一夜を過ごした事も無い。
想像妊娠という、一種の精神病でも無い。
医者は、おめでたです。と一言。
その一言に、どれだけ少女は傷付いたろうか。
どれだけ、混乱しただろうか。
シスターに叱られ、修道院の仲間達からは後ろ指を差され、やがては修道院から追い出された。
当て度無くさ迷う少女は、やがて小さな臭い牛小屋で眠りに着く。
さ迷った為に疲れ果て、足は棒のように突っ張り、足の裏には豆が出来て潰れていた。
温かくも微妙に固い牧草を布団に眠れば、奇妙な夢を少女は見る。
見た事も無い異形が、四体。少女を囲んでいた。