小物

□夜の火
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「どうしよう…」
暗くなる街で1人、家に帰る勇気もなく歩いていた。
何時の間にか建物の下の伸びる影が曖昧になり、
それらが判別出来なくなるような時間になっていた。
「…?」
夜気の中につんとした煙の匂いがする。
ふと、空を仰ぐと闇に染まり始めているはずの空が赤かった。
「火事?」
すると間も無くしてけたたましいサイレンの音がやってきた。
だが一瞬にしてけだるく鈍い音に変わり遠方へと遠ざかって行く。
「………」
何も思う事が無かった。
ある時期になると何故か一気に増えるのだ。
もう何度も聞いて、聞き飽きて、今更考える事も無かった。
周りの全てが、そうだった。
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