マロン小説

□【X】
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"好き"なんて
軽々しく口に出すお前が
とてもじゃないが
理解できない。



「トランクス君、好きだよー。」

「……」

「ねぇ、聞いてる?」

「……」

「ねぇってばー。」

「…聞いてるよ。」



毎日毎日、
"好き"だと連発されて
そんな軽くなった言葉を
どうやって信用しろと言うんだ。



「難しいこと、考えてるの?眉間にシワ寄ってるよ。」



無意識にシワの寄った眉間をスルリと撫でられて
俺は思わず後退った。



「…触るな。」

「えーなんで?トランクス君のこと好きなんだから、いいでしょ?」

「いいわけないだろ!」

「どうしてそんなに怒ってるの?」

「お前が…!」

「僕が、何?」



近付けられた顔に
心拍数が上がったなんて
そんなことあるわけない。
錯覚だ。



「ねぇ、トランクス君。言ってよ。」



悟天の瞳の中に
鋭く光る、
何かを見た気がした。



「トランクス君、好き。」



騙されるな。
これは錯覚だ。



「素直になりなよ。」



嘘だ。
悟天は俺のことなんか
好きじゃない。



「僕のこと、好き?」



悟天の瞳に映った自分を見ていられなくて、
俺は遂に目を閉じた。



「好きだよ、トランクス君。」



その言葉だけが
重く伸し掛かった。



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