全国大会、

□赤也
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時計を見てみると時刻はもう真夜中を示していた。


何時もならもうとっくに眠っている時間。



冷房が効いて快適な部屋に隣合わせで座る。




早寝がモットーの私がこんな時間まで起きてる理由…



それは、



「なぁ、俺が今から言うこと聞き流してくれていいから」



『は?』






この馬鹿な幼馴染みのせいだ。




「俺さ、また…負けちまったんだよ」



『…?』



「青学ごときに2連敗だぜ?ははっ、笑っちまうよな…」



『……』



「……」




『ねぇ、赤也』



俯いて、珍しく情けない顔をする幼馴染み。
こんな赤也を見るのは中1の時以来だ。



(…確かあの時は三強にボロ負けしたんだっけ。)



そんなことを振り返りながら今だ俯いたままの赤也の頬にそっと触れる。




「!」




『赤也…』




そしてそのまま力の限り



引っ張った。



「いてててててっ!!」


『こんのバカ也っ!情けない顔してんじゃないわよ!』



立ち上がりジタバタと喚く赤也の頬をさらに強い力で引っ張ってやる。



「いひゃ!いひゃい!まひでやめほって!(訳:痛っ!痛い!まじでやめろって)」



『うるさい!このワカメが!青学だかなんだかしらないけどねぇ…それに負けたからってどうしたわけ?2連敗?それがどうした?次勝てばいい話でしょうーが』




そう言うと先程まで暴れていた赤也の動きがピタっと止まって。見ると目がおもいっきり見開いていた。



頬をつねっていた手を離し赤也の目をじっと見る。



カチカチと時計が時間を刻む音がして、沈黙が流れる。




『今日駄目だったなら次、負かせばいい。それでもまた駄目だったらまた次、負かせばいい。』



「……」




『あんたはもう部長でしょーが。そんなカッコ悪い顔してたんじゃ高等部に上がる幸村達に顔向け出来ないよ。』


『いつもムカつくくらい生意気で。キレたら見境なし。しかもすぐに相手を挑発する。まぁ…とても部長の器とは思えないけど。』




『少なくとも。


俯いてる暇は、ないんじゃない?』




言い終えてベッドにドカッと座り込む。赤也はなんだかばつが悪そうに頭を掻いていた。



「…、お前…容赦ねーのな」



ずっと黙ったままだった赤也が沈黙を破る。



『当たり前でしょーが。私はあんたのファンの子達みたいに甘くないつーの』



「聞き流せって言ったのに…」



『うるさいなぁ。うじうじしてるアンタの姿に耐え切れなかったの』



「お節介。」



『うるさい。』






「…へへっ。やっぱお前サイコーだわ」




そう言っていつも以上の満面の笑みで笑う。
その顔に吊られて私も笑った。




さっきまでとは違った、力に溢れた瞳。ただ上だけをがむしゃらに目指す、



王者の目。







時代を変える風がぶわっと外に吹いた気がした。





(昨日を糧に歩けばいい、)

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