全国大会、
□立海
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「終わった…か、」
精市の声がテニスコートにやけに響いた気がする。
全国大会も終わり、先程まで居た観客や選手の姿も今はない。
静寂の中で呟いた精市の言葉だけが耳にこだまする。
それはきっと皆同じなんだろうけど。
「……」
青学に2度の敗戦。
立海大付属は惜しくも悲願だった全国大会優勝を逃した。
全国3連覇という目標を達成できなかったのだ。
優勝を逃した後、OBや同級生に「良くやったよ、」とか「準優勝でもたいしたものだ」とか。そういう同情に似たものを幾つか向けられた。
部長である精市が長い間不在だったから仕方ない、なんて言う先輩や同期も居た。
「……」
「精市…」
「幸村君…」
「部長…」
「精市…」
「幸村君…」
「……」
「幸村…」
「……」
一人佇む精市を見て思う、
――あぁ、精市は責任を感じているんだと。
8ヶ月もの長い間、部を副部長である弦に任せっきりにした事、
ううん。弦だけじゃない。蓮ニ、比呂、雅治、ブン太、ジャッカル、赤也。
その他テニス部の皆に申し訳ないと思ってる。
優勝して皆にその借りを返す、とかいう気でもいたんだろうか。
(くだらない、なぁ…)
誰もが重く口を閉ざしたまま。
皆の背を少し離れた距離から傍観者のようにしばらく眺めていた。
赤也やブン太は悔しそうに拳を握り閉めている。他のメンバーもいつもとは表情が違っていた。
「……」
私が憧れ、傍で見てきたテニス部は、こんなものだったのだろうか…?
「赤也」
私がそう呼ぶと、力なく「なんスか…」と後ろのベンチに座る私に振り返った。
他のメンバーも私の方に振り向く。
「あんた来年優勝するよね?」
「は、い…?」
唐突で意味が分からない、といったようにキョトンとしたままの赤也に再度繰り返す。
「ゆ・う・しょ・う・す・る・よ・ね・?」
「ははははい…!」
「いや、赤也どもりすぎだろぃ」
「真っ青じゃな」
にっこりと笑う私に赤也はピタッと凍りつく。
赤也の答えを聞いてからベンチからスッと立ち上がる。
「よーし!じゃあ中等部、高等部揃って全国制覇かー!」
「!」
私の言葉を聞いて皆が一斉に顔を上げた。
あの精市さえ少し驚いているようだ。
「でも、部長の精市がこんなにウジウジしてたんじゃー高等部でも準優勝止まりかなー?」