「ほら、やるよ。」 そう言って渡したのは藍色のリボンのかかった細長い白い小箱。 3月14日、ホワイトデー。 今年はたまたま日曜日で百合は当然の如くうちに遊びに来た。 本日の百合の目的は俺からのお返しをもらうこと。 「わぁ、ありがとう。開けていい?」 お礼もそこそこに百合は中が見たいと目をキラキラさせる。 「お前な、少しは遠慮しろよ。」 「いいじゃん。毎年その場で開けてるんだし!」 呆れたように言ったら百合は楽しげに包みを解きだした。 その様子に俺の表情も緩む。 今年はない小遣いをはたいて例年よりもいい物を買った。 喜んでくれればいいんだけど。 中から現れた代物に百合が歓声を上げる。 「かわいい!」 小箱から現れたのはガラスの目をもったプラチナの猫。 小さなそいつは銀色の鎖にぶら下がってきらりと光った。 その猫よりも輝く目で百合がそれを見つめる。 「敬、ありがとう!」 にっこり笑った百合に俺も笑い返した。 この笑顔を見るために俺はこうして毎年お返しをする。 . |