千月的徒然草

□Case1:敬
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「ほら、やるよ。」

そう言って渡したのは藍色のリボンのかかった細長い白い小箱。

3月14日、ホワイトデー。
今年はたまたま日曜日で百合は当然の如くうちに遊びに来た。
本日の百合の目的は俺からのお返しをもらうこと。

「わぁ、ありがとう。開けていい?」

お礼もそこそこに百合は中が見たいと目をキラキラさせる。

「お前な、少しは遠慮しろよ。」

「いいじゃん。毎年その場で開けてるんだし!」

呆れたように言ったら百合は楽しげに包みを解きだした。

その様子に俺の表情も緩む。
今年はない小遣いをはたいて例年よりもいい物を買った。
喜んでくれればいいんだけど。

中から現れた代物に百合が歓声を上げる。

「かわいい!」

小箱から現れたのはガラスの目をもったプラチナの猫。
小さなそいつは銀色の鎖にぶら下がってきらりと光った。

その猫よりも輝く目で百合がそれを見つめる。

「敬、ありがとう!」

にっこり笑った百合に俺も笑い返した。

この笑顔を見るために俺はこうして毎年お返しをする。
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