千月的徒然草

□Case3:恵
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「やっぱりさー、原作が長いと映画にするのは大変だよね。特にこの本なんて伏線ばっかりで、何処をカットしちゃいけないのかわかったもんじゃないし。」

「本当にそうだよね。今回出てきた指名手配犯、実は一巻にもう出てるんだ。百合ちゃん気付いてた?」

「うそっ、そうなの!?全然気付かなかった。」

「一巻の第一章。名前しか出てこないんだけどさ、気付いたときには僕もやられたーって思ったよ。」

「って言うか、一巻重要人物出すぎじゃない?フィッグとか、グリップフックとかさ。」

「あはは、映画ではカットされる運命だけどね。」

「ぬおぉ、そうなんだよ!この作品は脇役がかなりいい味出してるのに!」

「いかんせん、長い話だからね。」

今日は百合ちゃんと敬と僕とで映画を見にきた。
今は見終わった映画の品評会を軽食がてら喫茶店でしている。

天気は穏やかな快晴で気温も高すぎず過ごしやすい。
問題の映画の出来のほうもまずまずで、だからこそ僕と百合ちゃんはその話で盛り上がってるんだけど、何が気に入らないのか敬は今朝からずっとむっつりと押し黙ったままだ。

「ごめん、私ちょっとトイレ行ってくる。」

「うん、ごゆっくりー。」

カバンからハンカチを取り出して席を立った百合ちゃんを見送ると、二人だけのテーブルに静寂がおりてきた。
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