「学校ではあまり見せびらかさないほうがいい。先生に見つかったら没収されちゃうよ?」 びっくりして振り返ったら、言った本人はクスリと笑った。 どうやら言いつけられる心配はしなくていいようだ。 ほっと、息をつく。 男の子は本を机の上において私の向かいに腰掛けた。 「君は新入生かい?僕は西野恵。よろしく。」 笑って差し出された手を握る。 「私は川岸百合。お察しの通り、なり立てほやほやの新入生よ。」 一瞬の間、その後 二人して肩を揺らして笑った。 やわらかいその笑みに、胸がドキリと高鳴った。 「あなたは二年生?」 西野さんの名札を見て言った。 敬の名札と同じ色のラインが入っている。 「そうだよ。僕は帰宅部。放課後はよくここで本を読んでる。」 言って西野さんは本の上に手を置いた。 「ここに先客が居たのは初めてだよ。」 いつもは僕一人なんだ。 そう言ってとっておきの秘密を話すように笑った。 その悪戯っぽい笑顔に、私は一瞬で恋に落ちた。 猫の瞳がキラキラと日に輝く。 その輝きは幾重にも跳ねて踊って、砕けて消えた。 ガラスの瞳の輝きはただの輝きのまま、私の胸元を飾っていた。 . |