千月的徒然草

□Case2:百合
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「学校ではあまり見せびらかさないほうがいい。先生に見つかったら没収されちゃうよ?」

びっくりして振り返ったら、言った本人はクスリと笑った。
どうやら言いつけられる心配はしなくていいようだ。
ほっと、息をつく。

男の子は本を机の上において私の向かいに腰掛けた。

「君は新入生かい?僕は西野恵。よろしく。」

笑って差し出された手を握る。

「私は川岸百合。お察しの通り、なり立てほやほやの新入生よ。」

一瞬の間、その後 二人して肩を揺らして笑った。
やわらかいその笑みに、胸がドキリと高鳴った。

「あなたは二年生?」

西野さんの名札を見て言った。
敬の名札と同じ色のラインが入っている。

「そうだよ。僕は帰宅部。放課後はよくここで本を読んでる。」

言って西野さんは本の上に手を置いた。

「ここに先客が居たのは初めてだよ。」

いつもは僕一人なんだ。
そう言ってとっておきの秘密を話すように笑った。
その悪戯っぽい笑顔に、私は一瞬で恋に落ちた。

猫の瞳がキラキラと日に輝く。
その輝きは幾重にも跳ねて踊って、砕けて消えた。
ガラスの瞳の輝きはただの輝きのまま、私の胸元を飾っていた。

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