人と一緒に居るときに沈黙が続くのは得意じゃない。 何か話し掛けなくちゃと思っていたら、以外にも敬が話し掛けてきた。 「お前、どういうつもりだ。」 「どういうって何が?」 言われた意味がわからなくて、隣にいる敬の顔を見る。 その顔は相変わらず不機嫌なむっつり顔で、ちょっとだけ残念に思う。 「今日のことだよ。」 ああ、そういうこと。 「敬、映画嫌いだっけ?だから、朝から不機嫌だったの?」 そんな見当違いのことを言う僕に敬は思わず大声を出した。 「そうじゃなくて!」 そのまま言い募ろうとした敬は他の客がこちらを見ているのに気が付いて言葉を詰まらせる。 大きなため息をついて乗り出していた身を再び椅子に沈めた。 「そうじゃなくて…お前と百合のことだよ…。」 そんなこと最初から解かってる。 君が今の関係に憤りを感じているのも、本当はちゃんとわかってる。 でも、そんなこと君には教えてあげない。 「お前、今日は百合に映画に誘われたんだろ?」 「そうだけど、敬と三人の方が楽しいかと思って。」 そう答えた僕に、敬はため息混じりにこれだよ…と呟いた。 「お前、女の子が一緒に映画に行こうって言ったら、それはデートの誘いだろうが!」 「そうなの?」 「そうなの!」 君はこの状態が気に入らないんだ。 僕をデートに誘う百合ちゃん。 その誘いを断らず何も知らないふりをして、さらに敬を誘う僕。 僕と百合ちゃんがデートするなら、僕が百合ちゃんとのデートを断るなら、君は嫉妬するなり、安心するなりできるけど、今の状態だと宙ぶらりんでどちらもできない。 だから、君はこの状態が気に入らない。 だって、君は… 「でも、敬は百合ちゃんが僕とデートしてもいいと思ってるの?だって、敬は百合ちゃんのことが…」 「やめろ!」 「何々?大きな声出しちゃって、何の話?」 敬が僕の言葉を遮ったところで百合ちゃんが戻ってきた。 敬はまた憮然として黙り込んでしまう。 |