夢想

□春雨や
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ばさっと、傘をひらく音がして、隣から押し殺したような忍び笑いが聞こえてきた。

「なんだよ。」

憮然として問いただせば、相手はただただ首を振るばかりで。

「そんなに面白かったか?」

「いや、歳は優しいなと思ってさ。」

しみじみと言う勝太に、ふんと鼻で笑って言ってやる。

「傘の礼に飯くらい出せよ。」

「何もなくても、うちに来たときは必ず食べて帰るだろ。」

二人で目を見合わせてにやりと笑う。
じっとりと着物が張り付くような雨は梅雨を思い出させて不快だし、ぬかるんだ泥の感触は気持ち悪かったけれど、たまにはこんな風に、傘を差しながら二人で歩くのも悪くない。


春雨や 客を返して 客に行

豊玉

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