KIRIN(番外編)〜クリスマスの雪〜短編
□KIRIN(番外編)〜クリスマスの雪〜
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紅葉が落ち葉となり、冷たい風が吹き抜ける12月。
相変わらずの学校生活で、相変わらずガキな男子に少し苛ついていた。
掃除をサボり遊ぶ男子に、女子は笑いながら「元気だねぇ。」なんて言うんだ。
結局許してる女子に対し、私はそこまで大人にはなれなかった。
この数年で男女の関係がかわった。
この前まで男子は男子女子は女子で分かれ、仲間がはっきりしていたのに、いつの頃からか男女仲良く(仲良い事はいいんだけどね)しだして、誰が誰を好きとかいう話が増えてきた。
ほら、今だって。
「今、中村くんと目が合っちゃった!」
「え?それって彼も気があるんじゃないの?」
「やだ、どうしよう!」
いつもより1オクターブ声を高くし、はしゃぐ彼女たちから一歩私は退いた。
正直まだそんなのはよく分からない。
「麒麟ちゃんは?好きな子いないの?」
「え?」
「この子初恋もまだだからねー。」
「えー?5年生なのに?」
みんなの驚き声に顔が瞬時に赤くなる。
5年生でって、みんなが早いんじゃないの?
「天然記念物じゃない?いいなぁって思う奴はいるでしょ?織田なんて最近仲良いじゃん。」
「仲良いって言うか、隣の席だから話するくらいだよ。」
「そう思ってるのは麒麟ちゃんだけかもよ。もうすぐクリスマスだし狙ってたりしてー。」
からかう様に笑う綾女ちゃんとののかちゃんを上目遣いに睨みつけた。
「そんな事ないもん。バケツの水変えてくる!」
逃げるようにバケツを握ると廊下へ出た。
ああいう話は苦手だった。
だいたい好きとかで付き合ったりしたら何が変わるの?
付き合うって何をするの?
ちっとも分からない。
廊下にある手洗い場に汚れた水を捨てる。
前まではテレビや好きなアイドルの話で盛り上がってたのに…。
私は大きなため息をつくとバケツを置き、勢いよく蛇口を捻った。