白雪
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「フォングランツ・アーダルベルト!何故国境に近付く!?」
「相変わらずだなウェラー卿、腰抜けどものなかの勇者さんよっ!」
ウェラー卿と呼ばれた青年はいつの間にか馬上から降りていて、抜き身の剣を構えながらアーダルベルトと対峙していた。
アーダルベルトもしかりで、先程まで腰から下げていた剣を抜きさっている。
さっきの金属音は剣を打ち合う音だったようだ。
でも…“剣”…
……“剣”…
銃刀法違反じゃないのか。
だけどこの常識からかなり逸脱した異空間だったら何でもありそうな気がしないでもない。
『ここは剣と魔法のRPG世界。貴方は選ばれし勇者なのです』
……嫌な想像をしてしまった。
嫌だ。
そんな使い古されたファンタジーもののオチ、嫌過ぎる。
死んでもごめん被りたい。
思考にふけりながら辺りを見回すと、ある違和感に気付いた。
「…あれ?渋谷君……どこ行った?」
砂煙は晴れ、場は見通しもいい。
それなのにあの学ラン少年が見当たらない。
すぐそばにいたはず……いや、さっき骨格標本に軽くびびったから少し離れたような…
だがそれにしても見当たらないのはおかしい。
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