白雪

□09
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そのまま暫く進んだところで何度目かの休憩が入った。
今まで通ってきた村と比べると、大きな集落。
都が近い証拠だろうか。

ちらりと空を見ると、大分日が高くなっていた。
酔い止めが切れかかってきてることからみて、相当長い時間馬上で過ごしていたことになる。

私の時刻を確認するものは携帯電話だけなので、正確な走行時間は不明。
こういうとき人工衛星頼りの電波時計は役に立たない。
…こういう状況自体が稀だけど。

「あー…しんどい〜」
「大丈夫?」
「ん〜…微妙」

渋谷君は本当にしんどそうだ。
元来酔わない人でも馬は別、ということか。

「だから酔い止め飲めばって言ったのに」

出発直前、私は渋谷君に自分の酔い止めを勧めたが答えは“遠慮しとく”。
理由を聞いてあまりにも現代人にしては健全過ぎた理由に唖然とした記憶もまだ新しい。

「だって、そんなことしたら体の免疫力が落ちるだろ〜…せっかく人間は自然治癒能力を授かってるのに、それを乗り物酔いくらいで下げるのはどうかと思う〜」
「……そんなにふらふらしながら実行することでもない気がするけど」

本当、現代人にしてはやたらと健康的だ。
体育会系にしても程がある。

逆に私はどちらかといえば薬によく頼る方。
酔い止めの他に鎮痛剤や胃薬も常備している。
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