白雪

□15
3ページ/8ページ

でもそれを考慮したとしても、彼の様子に違和感を感ぜざるを得なかった。
以前痛いほど向けていた嫌悪感は不思議と感じず、彼から見て取れるのは驚きと焦りだ。
要は“しまった”という顔。
ヴォルフラムさんはその表情のままぴしりと固まっていた。
こうなっては話しかけるに話しかけられない。
少々沈黙が落ちた。

「……」
「……」

痛い沈黙。
私は饒舌な方ではないし、相手が相手だ。
下手なことは言えない。
いざこざに発展したらそれこそ面倒だ。
だけど意外なことに先にそれを破ったのは彼の方だった。

「……のか」
「は?」

俯き、表情が見えない上に小声だったからか内容はよく聞き取れない。

「あの今なんて」
「…っ、もう起きていて大丈夫なのかと聞いたんだ!!」

顔を思いっきり上げ、ヴォルフラムさんは叫ぶように言い放った。
どういうわけか頬を紅潮している。
…って、え。
“大丈夫か”って、これは労わり言葉の方だよね。
ヴォルフラムさんが私に?
世にも奇妙なものを見ている気がして少し言葉に詰まったけど、解答は言うまでも無い。

「大丈夫ですけど」
「そうか…」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ