白雪

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目の前が白んでくる。
ふわふわと何かに包まれている感覚。
暖かくて心地いい。
でも意識は静かに覚醒していった。
いまだに見慣れない繊細な模様の天蓋が視界に入る。
顔は羽毛(多分)入りの枕に埋まっていて、掛けられているのはこれまた羽毛(多分)入りの上掛け。
ここはどうやらベッドの中らしい。
天蓋越しに見える日の光は強く、今が昼であることを主張していた。
体を起こすといつの間に着替えたのか寝間着姿。
しかもまっピンクでフリフリ。
寝起きで重い頭を何とか振り払ってベッドから降りると、そのフリフリ具合がさらによくわかる。
ひだには細かいフリルがあり、各所にリボンのあしらわれたネグリジェだ。
…着替えよう。
一刻も早く。
クローゼットから適当に見繕ってベッドの上に置き、ネグリジェの裾を引っ掴んで捲り上げる。
そういえば何で私こんな真っ昼間に寝てたんだっけ?
渋谷君が大暴れした挙句ぶっ倒れたあとくらいから記憶が途切れている。
外の様子を見る限り大して時間は経ってないみたいだけど。
ネグリジェから頭と腕を抜いてベッドの上に置いておいた服を身に付ける。
……この展開…まさか私も倒れた、とか?
それなら色々と辻褄も合うけど解せないな…
そもそも何で傍観していた私が倒れなきゃいけないんだ。
安心して気が抜けて気絶なんてどんだけデリケートなんだよ私。
服の袖を通し、かちりと金具を止めて着替え終了。
やたらゴスロリチックだけどこれが一番マシだったんだから仕方が無い。
…さて、次は何をしようか。
時計が無いから正確な時間も分からないし、状況もさっぱりだ。
ドアを開けて廊下を見渡してみても相変わらず人っ子一人いない。
…あ、ここにいるのは魔族の皆さんだから魔族っ子一魔族かな。
語呂悪いけど。
廊下に踏み出すとかつんと音が響く。
兎も角、誰かしらに会って今何時かくらいは聞こう。
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