白雪
□22
1ページ/3ページ
外は晴れ渡った空。
絶好の外出日和と言ったところか。
「ねぇ、本当についていくの?」
「当たり前だろ。ぼくはあいつの婚約者だ」
さも当然だという風にヴォルフは言い放つ。
「しかも手ぶらで」
「金は持ったぞ」
…出た、金持ちの「必要な物は向こうで買えばいいじゃん」思考。
ヴォルフの懐から取り出された革袋は、沢山詰まっていますと言わんばかりにぱんぱんだ。
結局、魔剣を取りに行くのは渋谷君とコンラートさんの二人ってことになったが、それまでが大変だった。
特に自分が留守番だと聞かされたギュンターさんの取り乱しっぷりの凄まじさときたら…
ここまで来ると言いくるめた渋谷君を尊敬するしかない。
まあ仮にも(私ごときが言うのもなんだけど)、一応王佐なんだし、諦めてお役目を遂行して頂きたいものだ。
けどヴォルフがやけに大人しいと思ったら…こういうことか。
本人曰く別ルートで港まで行き、船に忍び込むらしい(若干語弊があるかもしれないけど概ね合っている)。
「お前は行かないのか」
「…行かない」
過保護とはいえギュンターさんがあそこまで危惧するくらいの場所だ。
仮に私が行ったところでお荷物が増えるだけだろう。
それ以前にそんな(私にとっては)無駄足が船だなんて死んでも嫌だ。
「……ヴォルフもよくやるな…」
着替えるからと部屋を退散させられ、あてどなく廊下を進む。
今頃渋谷君は変装するのに髪染めてるんだろうな…