白雪

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例えば誰かに「幽霊を信じるか」と問われたとする。
考える間もなく私は即答出来るだろう。
勿論「否」だ。
これはきっと私の身内に問うても同じ答えが返ってくる。
いや、信じていないというよりも身近でないと言った方が正しいか。
私はこれまでテレビや小説以外でその手のものに触れたこともなく、霊感なるものも持ち合わせていない。
自分とは壁を隔てた世界のことだと思ってる。
他人に話せば精神を疑われるような体験をしても(幽霊に関しては)その考えは変わらない。
…こんな状況に陥った今でさえ、だ。

「おかえりー」

1、2時間ほどギュンターさんから習慣や歴史の授業を受けた後、何冊か本を借りて部屋に戻ってみれば…

「随分長かったな。お勉学なんて大して面白くもねぇのに」

血盟城に負けず劣らず豪華な客室のベッドにやたら見覚えのあるその男は陣取っていた。
夢と違い意識がはっきりしているので相手の細かい容貌もよく見て取れる。
肩を過ぎた位置でウルフカットされたプラチナブロンド。
髪と同色の切れ長の瞳は愉しそうに細められている。
顔立ちはこれでもかというほど端正だ。
黒いフード付きの外套を身に着けているせいか、彼自身が輝いているように見える。
…そしてその身体はうっすらと透けていて向こう側の壁が映っていた。

「……」

一瞬、どう反応していいか迷った。
この男は約一ヶ月前に散々人をおちょくっていたが、それはあくまで現実とは離れた場所でのこと。
ましてや姿を見せたのは夢の中だけ。
これはどう反応…というか、これをどういうものだと認識したらいいんだろう。
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