白雪

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白金色の髪がさらりと彼の肩から落ちる。

「不穏な動きをしてるのは確かだろうな。こっちにすぐ攻め込んで来ることはねーだろうけど」

くるりと、仰向けの格好からうつ伏せに。
足をぱたぱたと動かして、まるで本当に床に寝そべっているようだ。
頬杖を突きつつまた言葉を紡ぐ。

「でもここの連中が早々に対処したがるのもわかるぜ。なんせロクに他国と国交してないんだからな。そもそも情報源が少ないのさ」

“魔族”ってのも難儀だなぁ。
こんな話をしているにも関わらず、生成さんは笑みを崩さない。
目を見ればわかる。
心から愉しんでいるのだろう、この人は。
だが、わからないでもない。
彼は私以外の者と干渉できない。
出来る者を、私は見たことが無い。

「あの“陛下”がどうこの国の行政を変えるか、見物だな」

彼を詩的に例えるなら“風の化身”。
…我ながらなんて薄ら寒い例え。
しかし、間違ってはいないと思う。
正体はいまだに不明だけど、生成さんの神出鬼没ぶりからしてあちらの情報を掴むことが容易な可能性は高い。
本当に、風が世界を巡るように。
だが、仮にそうだとしても無意味だ。
この人にとってのメリットがない。
戦争が始まろうが収まろうが、生成さんには全く関係ない筈だ。
そもそも自分以外で生成さんと干渉できる人物を私は知らないのだから、彼の情報を聞けるのは私だけ。
私が頼めば、彼は事を調べてくれるんだろうか。
…いや、恐らく否。
彼に利がないことに変わりない。
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