白雪

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それにいったい誰がこんな小娘の戯れ言を真に受ける?
無駄なことは、したくない。
下手に動いて偽善者に成り下がるなんて真っ平御免だ。
最後の焼き菓子を口に放り、私は再び上を仰ぎ見る。
閉め切った室内にも関わらずカーテンが僅かに揺れた。
窓から覗く空は、青い。
生成さんは既に姿を消していた。
もう、これも“いつものこと”になっていた。
大して気にせず視線を本に戻し、続きに目を走らせる。
気付けば外も、中も無音。
文章も佳境に入り何枚かページを捲れば後書きに辿りつく。
…この続き、書斎に置いてあったっけ。



……
………


食べ終えた器とティーセットをカートに載せ廊下を歩く。
カラカラと車輪が音を立て、そのたび小刻みに器が震えた。
一応侍女さんは取りに来ると言っていたけれど、あの本の続きもないしすることがない。
つまり暇。
向こうにとっては客人の戯れだと思われるかも知れないが、まあ致し方ない。
一度仕事をとるくらい勘弁して貰おう。
こっそり厨に置いて、後はお任せすればいい。
……厨か。
昨日の今日だ。
危惧しないほど、あれは軽い出来事じゃなかった。
忘れようと思っても忘れられない。
……今度はギュンターさん、いない…よね。
あの異臭、あの光景……出来れば忘れたい。
あれは少々きつかった。
コンタクトか眼鏡してたら確実にトラウマになっている。
さっきグウェンダルさんと廊下で追いかけっこしてたから大丈夫だろうか。
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