白雪
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今日も朝日と鳥の囀りで目を覚ました。
ギュンターさんが一向に血盟城に戻ろうとしないので私は未だにここでご厄介になっている。
ヴォルテール城で寝起きし始めてから既に二日経とうとしていた。
「陛下っ!陛下ーっ!」
二日間、割と近場で見ていれば人の印象は嫌でも変化する。
「ギュンター!一体今度は何をやらかす気だっ」
初めてお目にかかった時はお堅くて威厳ある、近寄りがたいイメージしか持てなかったフォンヴォルテール卿に対する印象も変わりつつあった。
「邪魔しないでくださいグウェンダル!これは陛下の安全に必要な行為なのです」
いや、変わらざるを得ないと言うべきか。
「その陛下から城の留守を頼まれたのではなかったのか!」
…主に王佐殿のせいだけど。
「いい加減にあの娘を連れて血盟城に帰れ!」
どたどたと振動が走り、侍女さんに淹れてもらったお茶の水面が震える。
震源は勿論廊下だ。
相変わらずギュンター閣下は文字通り危行に走り、グウェンダルさんはそのたび駆り出されている。
そして私はそれを傍観する位置にいた。
見ている分にはいいけど是非とも関わりたくない。
要は、面倒だから。
「……平和だな」
この現状に、思わずそんな感想が漏れる。