天青
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仄暗い闇が、そこにあった。
規則的に聞こえる水の雫が落ちる音。
湿った空気が辺りに満ちている。
ここは、洞窟。
それもかなりの広さのものだ。
男の大きく反響する靴音がそれを物語っている。
ゆっくりと、だがずしりと響く足音。
男は強く白い光を放つ灯りを片手に洞窟を進んでいた。
時々四方を見渡しながらも男の歩みは迷いを知らないのか、先は闇に包まれているも関わらず止まることはない。
白光はゆらりと揺れながら濡れた壁を照らし続ける。
何かを探すかのように。
「……」
不意に、男の歩みが止まる。
それと同時に白光も止まる。
ある壁を照らしたまま。
だがそこは何の変哲もないただの壁だった。
濃い土の色も、濡れた質感も変わらない。
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