天青

□01
1ページ/6ページ

仄暗い闇が、そこにあった。
規則的に聞こえる水の雫が落ちる音。
湿った空気が辺りに満ちている。

ここは、洞窟。
それもかなりの広さのものだ。

男の大きく反響する靴音がそれを物語っている。

ゆっくりと、だがずしりと響く足音。

男は強く白い光を放つ灯りを片手に洞窟を進んでいた。

時々四方を見渡しながらも男の歩みは迷いを知らないのか、先は闇に包まれているも関わらず止まることはない。
白光はゆらりと揺れながら濡れた壁を照らし続ける。

何かを探すかのように。

「……」

不意に、男の歩みが止まる。

それと同時に白光も止まる。
ある壁を照らしたまま。

だがそこは何の変哲もないただの壁だった。
濃い土の色も、濡れた質感も変わらない。


_
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ