CLAP*Thanks

◆お化けの話 3Z土方受け

「肝試しに行きやしょうぜぃ」

発端は総悟のこの一言だった

ある夏の蒸し暑い日
そう言えば今日は真夏日になるとニュースのキャスターが言っていた
そんな日の午後のこと

「なんでまたいきなり?」
「いやね、とある廃墟の情報を入手しやして」

総悟は情報力に長けているとつくづく思う

「なんでも殺人事件があったとかで、もう何年も使われていない空き家だそうですぜぃ」

そう言って話しはじめた総悟の横で、高杉は深くため息をついた

「ンなくだらねェ事するよか、俺とゲーセンでも行こうぜ土方ァ」

さりげなく肩に手を回す高杉を払いのけ、総悟の話に耳を傾ける
なんでもその空き家には今でも住人だった霊が徘徊しているらしく、近所でも何件か目撃談まであるらしいのだ

「で、そこで何してくるんだよ」





珍しく乗り気な俺に皆一様に驚いていたが、総悟は話をここぞとばかりに続ける

「そこで殺人が起きた現場になった部屋に名前を書いた紙を置いてきて、最後のやつが持ってくるってのはどうですかい?」
「でもよう総悟、そりゃちょっとまずいんじゃないか?」

正直怖がりな俺を心配してか、近藤さんが提案に待ったをかける
そう、俺こと土方十四郎は、ホラーやおばけの類が一切だめな今時ヘタレな高校生なのであった

「そうそう、土方は怖がりだもんなァ」

ニヤリと独特の笑い方をしながら、高杉がコツン、と肘を突いてくる
嫌味に取れるかもしれないが、これが彼なりの優しさだということは俺は知っている

「どうしやす? 行くか行かないかは土方さん次第ですぜぃ」

一斉にこちらを見つめる皆の顔を見、俺はうーんとうなり声を上げた
確かにそんな怖いところには正直行きたくないし、できることなら近づきたくはない

・・・だが

「行って・・・・みようかな」

そう告げた俺の顔は、恐らく沈みかけた夕日で赤く染まっていたことだろう






[TOPへ]
[カスタマイズ]

©フォレストページ