遠征編5

□No.86
1ページ/5ページ




―シンオウ白銀邸―




辺りが茜に染まる夕暮れ時…

縁側から伸びる夕日の明かりが

襖の開いた部屋を僅かに照らす…

その薄暗い部屋には、静かに目を閉じ瞑想をする少年の姿があった…









『……ヒスイ……』



ヒスイ:「Σ……!」


突然脳裏から聞こえた声に、ヒスイは目を閉じたまま反応した…


『聞こえる…?』

自分にテレパシーで話し掛けて来たこの人物を、ヒスイはすぐ誰だか察した


ヒスイ:「((ついに…出所ですか……リンドウ…))」


『……便利だよね…浅縹家は…
こうして今刑務所にいる僕と…どこかしらにいるヒスイが会話出来るんだから…』


ヒスイ:「((……出所したら……帰って来るのでしょう…?))」

『…ああ………でも…帰ったら…僕は篭の鳥だね……』


ヒスイ:「((当たり前です……
あなたは浅縹の名を傷付けた…まだ幸いにも世間には知られてませんが…
その罪は一生掛けても償わなければ……))」


一族を担う者として、その責任は一般の何倍も、のしかかって来る…
それをヒスイは言葉に込めた。

『……誰も分かってくれやしないんだね…原因は……まぁ、分からないか……』


しかしリンドウから返って来るのは、自分には責任は無い…と言う否定の言葉…


ヒスイ:「((…原因など…自分自身意外に何もありません…))」
明確な理由を述べない辺り、原因と言う言葉も、ヒスイからしてみれば、変な言い訳にしか聞こえなかった…


『……そうか……とりあえず、帰る前に…僕には詫びなくてはならない子がいるから……』


ヒスイ:「((…詫びる…?
Σいけません!真っ直ぐ帰って来なさい…!))」

リンドウの言う人物が誰なのか察したヒスイの眉間に、ギュッとシワが寄る


『…いやヒスイ…これは僕がやらなければならない事だ……』


ヒスイ:「((何を言って…!
………リンドウ!?))」




ふと脳裏からリンドウの気配が消え、
ヒスイは目を開けた…


 
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ